「4つの類型」の「国境紛争」が今後激化する理由 移民、アイデンティティー政治、遺恨、囲い込み

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

国境紛争の最後の類型は、“収容所群島”としての国境に対する反動だろう。ジャーナリストのトッド・ミラーは、2019年の著書で、勾留、投獄、追放の衝撃的な暴露を行っている。

ますます広域化しつつある国境防備

メキシコとの国境で家族を引き離すという2018年のアメリカの政策は、狙いの不正確なラッパ銃にも似た国境の性格を白日の下にさらした。ミラーは国境での手続きが、越境を望む人々の人生をできるだけ不快なものにするために使われている実情を記録する。2019年だけで、約5万7000人の移民がメキシコに送り返され、そこで亡命申請が審理されるのを待つように言われた。彼らは安全とは思えない町や都市で、何カ月も待つはめになるかもしれなかった。閉鎖的な国境や大量の追放、広範な勾留を受け入れまいとする国内のコミュニティーの支援を受けて、大勢の移民が国境のインフラを埋め尽くす世界を想像することは、決して不可能なことではない。

世界には、比較的豊かな地域を中心に、何千カ所もの移民勾留施設がある。「国境警備─勾留─軍事」の複合体は実に巨大で、年間予算は数十億ドル規模だ。勾留施設からドローン技術までを駆使する戦争は、「違法」「非正規」「歓迎されない」「望まれない」などと判定された人々に対して、現に遂行されている。国境と国境管理は、慎重でもなければ繊細でもない。国境のパトロールと管理に従事する人々にとって、何より責任を持つべきは国民国家と国土の安全保障なのだ。

国境防備はますます広域化しつつある。アメリカの税関・国境警備局は、フィリピンやケニアを含む世界中のアメリカ大使館に職員を置いている。その目的は、トッド・ミラーが記したように、国境がグローバルに守られるようにすることだ。防備の作業は、アメリカの物理的な国境から何千キロメートルも離れた場所で開始される。アメリカは軍事訓練と技術移転を介して近隣諸国を激励・支援し、グローバルな国境システムを運用している。結果的に、アメリカの南北の国境に到達する人数よりもずっと大勢の人々が、旅立ちを思いとどまらせられたり、別の場所で待たされたりしているのである。

次ページ気候変動は憎しみのエスカレートを引き起こす
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事