「遅れたら罰金」で逆に遅刻者が増えた意外な訳 組織をまとめるには「賞罰」はさほど重要でない

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例えば、読書をした子どもに1冊あたり2ドルを与えました。その結果、その子どもは読解力を向上させました。しかし、ダラスの効果も長くは続かず、1年経つと改善率は半分に低下してしまいました。また、報酬を与えることで、報酬なしのワークに興味を持たなくなることも明らかになりました。

この2つの実験からわかることはなんでしょうか。

まず、お金は単純なこと、誰でも努力すればできることに対して、一時的に著しい動機づけになるということです。一時的に「我慢する力を高める」と言い換えてもいいでしょう。

ただし、継続すると効果が薄れてしまいます。また、いったん報酬を出すと、報酬なしでは努力しなくなってしまいます。お金は明らかに人の行動を変化させますが、効かないことも多いのです。また、長期的に見ると、麻薬のように恐ろしい負の影響があるのです。

では、今度はお金を奪われるケース、つまり「罰金」が与える効果を見てみましょう。

お金を払えば「遅刻してもかまわない」

イスラエルのある託児所では、保護者がお迎えの時間に遅刻することが多く、悩んでいました。そこで託児所は、遅刻した人から罰金をとることにしました。

すると、なぜか遅刻者は、もとの2倍に増えてしまったのです。これは、「迷惑をかけたくない」と頑張ってルールを守っていた保護者たちまでもが、「お金を払えば遅刻してもいい」と考えるようになってしまったためでした。対価を払えば、迷惑をかけてもいいと、考えるようになってしまったのです。

さらに深刻なことに、罰金をとりやめても、遅刻者の数はもとには戻らず、多いままになってしまいました。「気持ち」によってつながっていた関係に「お金」を持ち込んだことで、人間的な関係性から、ビジネスライクな関係性に変わってしまったのです。特に注目したいのは、一度「お金」の関係を持ち込むと、「人間的な関係性」に戻すためのハードルがぐっと高まるという点でしょう。

動機づけにおいて、お金は万能ではないことがわかりました。その後の研究で、これらはお金特有の問題というより、「外部から行動を強いるような動機づけ」に共通することで、そのような動機づけには次のようないくつもの問題があることがわかってきたのです。

・好奇心を失わせる

・正解のない、高度な業務の生産性を落とす

・創造性をはばむ

・好ましい言動(善行)への意欲を失わせる

・ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長させる

・依存性がある(なしでは働かなくなる)

・短絡的思考や短期的思考を助長する

アメリカの作家であるダニエル・ピンクは、モチベーションを3つの段階に分けて説明しています。

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