「遅れたら罰金」で逆に遅刻者が増えた意外な訳 組織をまとめるには「賞罰」はさほど重要でない

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最後の「関係性」とは、「人を思いやり、思いやりを受けたい」「人を愛し、愛されたい」と願う心理的欲求です。人は「自分で考え、決定したい」という欲求を持ちながら、一方で「他者とも結びついていたい」と願っています。

リーダーは賞罰による「アメとムチ」をやめよ

ここで注意したいのは、「自律性の欲求」と「関係性の欲求」は必ずしも相反するものではなく、意図すれば両立できるということです。なぜなら「自律性」とは「自らの行動を、自分自身で選択したい」という欲求であり、「利己的な行動をしたい」という欲求ではないからです。関係性が満たされる選択肢を自らが選べば、双方が満たされることになるのです。

『だから僕たちは、組織を変えていける』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

やる気のスリーカード「自律性」「有能感」「関係性」が満たされることで、内発的動機は心の奥から湧き上がってきます。自らが選択したことで、自らの能力を活かして価値を生み、信頼しあう関係性が築かれていきます。

1人ひとりのメンバーの欲求を理解し、その欲求が解き放たれたとき、人は多くを達成し、豊かな人生を送ることができます。結果として、組織は大いなる成果を得ることができるのです。

マサチューセッツ工科大学(MIT)経営学部教授などを経て、MITスローン経営大学院上級講師を務めるピーター・センゲは、ある名言を残しました。

「十分な数の人々が、内発的な動機から自分の幸せの実現に全力をあげるようになったときこそ、組織の進化における決定的瞬間である」

彼の言う決定的な組織の変化とは、社員が自分のために動き、自然とコラボレーションし、組織の成果を上げる「自走する組織」になることです。そのためには、リーダーは賞賛と賞罰による「アメとムチ」をやめ、メンバーの3つの心理的欲求を満たし、内発的動機を高めていく必要があるのです。

斉藤 徹 起業家、経営学者、研究者 ビジネス・ブレークスルー大学教授

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さいとう とおる / Saito Toru

日本IBMを経て、2005年にループス・コミュニケーションズを創業。ソーシャルシフト提唱者として、知識社会における組織改革を企業に提言する。2016年に学習院大学経済学部経営学科の特別客員教授に就任。2020年からはビジネス・ブレークスルー大学教授として教鞭を執る。2018年には社会人向けオンラインスクール「hintゼミ」を開講。卒業生は1000名を超え、大手企業社員から経営者、個人にいたるまで多様な受講者が在籍。企業向けの講演実績は数百社におよぶ。組織論、起業論に関する著書も多い。
株式会社hint代表。株式会社ループス・コミュニケーションズ代表。

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