問題は、今回、オミクロン株で生じたRBD領域の変異のうちの4カ所は、“細胞に侵入しやすくする変異”である可能性があることだ。これはゆゆしき状況である。
それでも“本当に感染性が高まっているかどうか”は、培養細胞を用いて感染力を検証しなければわからない。さらに、今後の各国での感染状況やワクチン効果が明らかになってくれば、より詳細な像が見えてくるはずという。
「現段階では、オミクロン株は”かなり人相の悪い顔つき”をしていることは確かです。しかし、人のなかにも、人相は悪いけれど心根が優しい人がいます。それと一緒で、見た目だけでは判断できません。実際、これまでのラムダ株やミュー株は、見た目ほど病原性が高くありませんでした。そこは臆測でモノを申すのではなく、検証結果を待つべきでしょう」
デルタ株が置き換わった?
報道のなかには、「デルタ株がオミクロン株に置き換わった」というような内容を報じているところもある。だが、「これは間違っている可能性が高い」と宮坂さん。
「南アフリカではデルタ株のピークが減って、その次にオミクロン株が増えてきたため、そういうふうに見えますが、デルタ株とオミクロン株では、変異の仕方がかなり違っています。デルタ株との関連は低く、別のコロナから変異したと考えたほうがいいでしょう」
最近では、ウイルスの系統を調べる研究も進んでいる。近いうちに、どこ由来のウイルスなのかも、わかってくるという。
気になる感染力や病原性(悪性度)についても、まだわかっていない。わかっているのは、感染が確認された人のなかに無症状の人がいることと、症状があっても軽い(インフルエンザのような症状など)ということ、だ。
「一般的には、ウイルスが細胞内でどんどん増えてしまえば、それだけ重症化の危険も高まります。現段階では、重症化している感染者が見られないところをみると、侵入しやすい(感染しやすい)可能性はありますが、細胞内ではあまり増えないウイルスなのかもしれません」
ただ、これに関しては、後述するワクチンとの関連も考慮する必要がある。
現在、世界各地でオミクロン株に感染した人が相次いで見つかっているが、おそらく南アフリカを起点にして、人が各地へウイルスを運んで広げていった可能性が高いと、宮坂さんは見ている。
「繰り返しになりますが、オミクロン株の変異は相当なもので、これほど大きな変異が世界中で、同時多発的に起こることは考えにくいですね。おそらく1カ所で発生し、それが広がりつつあるのでしょう」
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