安楽死の現実に向き合った看護師が到達した結論 がんに苦しむ若い女性の希望を医師が拒むとき

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でも、いまは違う。自分の息子が病院に運びこまれたことで、患者の両親が感じる恐怖と、わが子の安楽死を認めたくない気持ちがよくわかったのだ。

安楽死は、強制的に最後のお別れをもたらすものだ。

私はいま、末期症状に苦しむ若い患者のケアをするときは、彼らが少しでも長く快適な時間を過ごせるよう力を注いでいる。ときどき病院の外に連れ出したり、栄養のある食事をとらせたり、できるかぎり痛みをやわらげたりして、患者が「早く死にたい」などと考えないようにするのだ。

医師にもそれを拒む権利がある

わが子に別れを告げる覚悟ができていない親の気持ちも、若い患者の人生を終わらせたくないと思う医師の気持ちも、いまならよくわかる。

『ある特別な患者』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

医師はみな、治療者(ヒーラー)としての信念をもっている。彼らにとって、自分の子どもと同じ、あるいはそれより若い患者に安楽死を施すことは、自らの信念に反する行為でもあるのだ。

安楽死は患者に与えられた正当な権利だが、患者の人生を終わらせたくないとき、医師にもそれを拒む権利があると私は思っている。

[安楽死に関する注記 ]
本エピソードの舞台であるオランダでは日本と違い、安楽死が合法である。オランダの医師たちは、患者から要望があると、その患者の人生を終わらせるための手伝いをする権限が与えられる。ただし、その行為には「デューディリジェンス[当然に実施すべき注意義務および努力]」がなければならない。

基準のひとつは、患者の苦痛の程度だ。患者が耐えがたい苦痛を感じていると判断され、かつ回復の見込みがないことが条件となる。判断にあたっては、主治医だけでなく、その患者の治療にかかわっていない第三者の医師による承認が必要になる。そうしたすべての基準を満たす場合のみ、医師は安楽死を施しても刑事責任を問われない。オランダでは、安楽死が死因全体に占める割合は4%で、その大半は末期がん患者のケースである。

エレン・デ・フィッサー オランダの日刊紙『デ・フォルクスラント』の科学ジャーナリスト

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Ellen de Visser

2017年にコラム「ある特別な患者(Die Ene Patiënt / That One Patient)」の連載を始める。医療従事者たちへのインタビューをまとめたこのコラムは、一般読者から専門家まで、多くの人に感動を与えてきた。

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