嘘を通した母に殺された少女が残した悲しい教訓 いじめ虐待調査医の感じた一抹の不安が的中した

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見抜けなかった児童虐待が悲しい教訓を残した(写真:spukkato/PIXTA)
医師や看護師たちが「自分の人生を変えたひとりの患者」について語ったインタビューをまとめたオランダの日刊紙『デ・フォルクスラント』のコラム「ある特別な患者」。
書籍化されオランダのベストセラーとなるとともに、アメリカをはじめ世界中で続々と翻訳出版されている。「コロナで死に瀕した女医を見守った看護師の回顧」(12月3日配信)に続いて、日本でも刊行された本書『ある特別な患者』の中から虐待に関するコラムをお届けする。

娘は病気だと言い張る母親

●屈託のない子 /ネンス・クーベルグ(いじめ虐待調査医)

その6歳の少女は、頻繁に医師のもとを訪れていた。

あるとき、その少女の通っている小学校から私のもとに連絡があった。どうやら、その子の母親から「うちの子は体調を崩しがちなんです」と言われ、どうすればいいかわからず、私たちに相談することに決めたようだ。

その母親は、最初のうちは「娘は胃腸の調子が悪い」としか言わなかったものの、やがて「娘がすぐに息切れする」「ときどき発作を起こして意識を失う」といった話までするようになった。そのうえ、娘が学校に行くときは常に薬を持たせ、症状が出たときはそれを飲ませてほしいと担任に伝えていた。

しかし妙なことに、学校にいるあいだ、その少女はとても元気そうだった。屈託がなく、活発で、いつもほかの子どもたちと楽しそうに遊んでいた。

「どうも……体調が悪いようには見えません」。校長先生はきっぱりとそう言った。

ところが、その母親のかかりつけ医は彼女に深く同情し、全面的にサポートすると申し出た。そして、そのかかりつけ医は、彼女の娘に大学病院で検査を受けさせることにした。

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