経済安全保障と軍事技術をめぐる重要な論点は、国際的な連携を推進することである。日米同盟の観点からは、ミサイル防衛(SM3ブロックIIA)の共同技術開発が実施され、すでに完成品を配備する段階まで進捗した。日米の防衛装備品をめぐる次の柱となる共同技術研究・開発の推進が望まれる。日米が直面するのは今世紀最大の安全保障上の課題といえる中国との戦略的対峙である。日米が軍事技術をめぐる共同研究・開発を通じて、この安全保障上の課題を克服する国防・産業協力を推進することが望まれる。
アメリカとの輸出管理をめぐる政策協調はとりわけ重要である。アメリカの再輸出規制の域外適用には日本の産業界からの批判も根強い。アメリカが日本とともに新興技術の対象や懸念すべきエンドユーザーに対する情報交換を平素から行い、エンティティリスト(アメリカ商務省産業安全保障局(BIS)が発行している貿易上の取引制限リスト)や軍民有業企業指定などの規制措置については、アメリカの一方的指定ではなく同盟国との協議を前提とするのが望ましい。そのために、日米で外務・経産省によるハイレベル協議を定例化することが重要であろう。
防衛装備品の海外移転の推進
最後の論点は、防衛装備品の海外移転の推進である。防衛装備移転三原則(2014年)の決定から7年が経過したものの、日本からの防衛装備移転はオーストラリアへの潜水艦、タイへの防空レーダー、インドへの救難飛行艇などがいずれも失敗し、フィリピンへの監視レーダー輸出を除き、確たる成果を挙げていない。日本の防衛産業が海外市場を獲得し、日本と友好国との防衛協力を推進するためにも、防衛装備品移転を強化するガバナンス改革は急務である。
経済安全保障をめぐる議論で、日本は戦略的な自律性と不可欠性の確保を重視した議論を進めている。安全保障分野での取り組みの課題は山積みだが、その前提として軍事領域の技術への洞察力を深めることが重要である。
(神保謙/アジア・パシフィック・イニシアティブ-MSFエグゼクティブ・ディレクター、慶應義塾大学総合政策学部教授)
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