日本の経済安全保障政策においても、機微技術の管理についてさらなるガバナンス体制の確立が重要となる。第1に、対内投資規制については2020年の改正外国為替及び外国貿易法(外為法)によって、外国人による日本買収手続きを厳格化する措置が採られている。ただ投資審査をする体制は十分とはいえず、アメリカの対米外国投資委員会(CFIUS)のような常設化された審査体制を整備することが求められる。
不必要な貿易投資の委縮を招かないように
第2に、安全保障貿易管理の強化も喫緊の課題である。日本では経済産業省を中心に、幅広い対象の新興技術の移転を規制(貨物の輸出・技術の提供)する措置を、大学、企業、研究機関に向けて啓発に努めている。広範な民生技術が対象となり、各企業や研究機関の輸出管理体制の拡充に努め、不必要な貿易投資の萎縮を招かないようにすることも重要である。
第3に、日本の防衛産業、機微技術を扱う事業者、重要インフラ事業者などの機密を保全するセキュリティークリアランス制度を確立することが重要である。機微技術や機密情報へのアクセスを階層に応じた許可性にするとともに、情報保全体制の整備を通じて国際連携の推進を図るべきである。
日本は「戦略的不可欠性」の観点からも、新興技術の開発と活用を抜本的に強化することが重要である。日本の産業界が保有する素材、要素技術、基礎研究、基盤技術を十分に掘り起こし、日本の防衛力に資する新興技術を育成することが肝要だ。特に従来の安全保障技術研究推進制度による基礎研究支援に加えて、基礎技術を装備化につなげる「橋渡し研究」や、技術と防衛構想をつなげる「将来戦研究」を総合的に推進することが求められる。
日本における防衛技術の研究開発は、長らく他国に比して低水準で推移していた。しかし、令和4年度概算要求において防衛省は研究開発費に3257億円(対前年度比1141億円増)を投じることを発表し、防衛技術に関するシンクタンク機能の強化や、ゲームチェンジャーの早期実用化に資する取り組みに本腰を入れる。防衛産業・技術基盤の強化とともに、新興技術の開発と実装化に向けたスキーム強化をさらに推進することが望ましい。
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