善戦で始まった岸田政権のコロナ対策に映る不安 幽霊病床や薬の対策は良いが追加接種は大丈夫か

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一方、日本で接種が始まったのは今年2月。医療従事者から始まり、高齢者の接種が本格化したのは5月のゴールデンウィーク明けからだ。日本の高齢化率は28%だ。日本の接種率が30%に達したのは7月31日だから、このころに高齢者の接種を終えていたことになる。それから8カ月後に追加接種をするなら、来年1月から接種を開始し、終えるのは4月だ。

2回目接種から8カ月も待っていれば、高齢者の免疫は落ちてしまう。アメリカ・ファイザーは、デルタ株の場合、2回接種から4カ月目には感染予防効果は53%まで低下すると報告しているし、同じくアメリカのモデルナも、ワクチン接種後約5カ月で、感染予防効果が36%低下したと報告している。

日本からも同様の研究がすでに発表されている。10月13日、福島県相馬市は、ワクチン接種を終えた相馬市民500人から採血し、中和活性を測定した結果を発表した。中和活性は、2回目接種から30日未満で2,024 AU/mL,30~90日で753 AU/mL、90日以上で106 AU/mLと急速に低下していた(図1)。

図1

(外部配信先では図表や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

ワクチン接種が遅れたことが逆に奏功

この状態で感染が拡大すれば、どのような事態となるかは容易に想像がつく。日本に危機感がないのは、現在、感染者数が低いレベルで抑え込まれているからだ。これは日本ではワクチン接種の開始が遅れたため、秋以降に現役世代が接種し、それからあまり時間が経っておらず、免疫を有している人の割合が高いからだと私は考えている。つまり、日本で感染者が少ないのは、ワクチン接種の開始が遅れたのを、菅・前政権が必死に追い上げたからだと言える。怪我の光明といっていい。日本人だけ特別と言わずとも、十分に説明がつく。

高齢者の命を第6波から守るために必要なのは1日も早く追加接種を進めることだ。現在、主要先進国で感染が拡大していないのは、日本以外にはイスラエルなど数カ国だ。夏場の感染拡大を受けて、イスラエルでは7月から追加接種が始まった。

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