では、岸田政権の誕生で、コロナ対策はすべてうまくいくようになったのか。そんなことはない。ここにきて、迷走が目立つようになっている。
その1つが無症状者へのPCR検査だ。岸田首相は、自民党総裁選で「予約不要の無料PCR検査所の拡大と在宅検査手段の普及」と打ち上げたが、11月12日に発表した「全体像」では、「感染拡大時には、無症状でも無料で実施できるよう支援」に後退した。当初、希望する国民全員に検査を提供する予定だったが、最終的には厚労省の■許可が必要となった。感染症法で検査の主体となる都道府県は、感染が拡大した際に、「検査促進計画」を厚労省に提出し、同省が審査・承認することとなった。
「PCR検査抑制に懸命な医系技官が、巻き返した」。厚労省関係者は言う。PCR検査数を医系技官がコントロールする余地を残した。今春の第4波で、広島県は無症状者に対するPCR検査を実施しようとしたが、その後、検査体制を見直した。
表向きは「感染者の急増で優先して検査すべき接触者が増え、能力が限界に近づいているため(中日新聞5月13日)」とされているが、「無症状者に対するPCR検査を抑制したい医系技官がさまざまなルートで圧力をかけた」(厚労省関係者)のが実態だと私は聞いている。岸田政権でも、同じような事態が起こるだろう。
追加接種の遅延はもっと深刻
岸田政権の迷走は、無症状者に対するPCR検査だけではない。追加接種の遅延は、もっと深刻だ。岸田政権は、追加接種のタイミングを2回目接種から8カ月とし、6カ月に短縮できるのは、施設高齢者などで集団感染時に限定するという方針を打ち出した。
これは医学的に合理的でない。政府はアメリカに倣ったと説明しているが、アメリカが8カ月と打ち出したのは、冬の本格流行までに、重症化しやすい人の接種を終えるためだ。アメリカと日本では状況がまったく違う。
アメリカで接種が始まったのは昨年12月。現在、接種を終えている人(58%)の半数が打ち終えたのは今年4月21日だ。アメリカは医療従事者、高齢者や持病を有する人から接種を始めたから、年内にはこのような人たちの追加接種を終えることになる。
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