「エレベーター来ないイライラ」解決した意外な物 ヒットを出せる人と出せない人の決定的な違い
エレベーターの横に鏡を取り付けたのです。この方法は、苦情を減らすのに極めて有効でした。なぜなら人間は、思わず見入るようなものが与えられると、時が経つのを忘れがちだからです(この場合は、自分自身に見入ってしまう)。
「インサイト」を見つけ、その解決策(打ち手)を決めていくときに使える戦略プランニングのテンプレートを用いて、この事例を当てはめて考えてみます。
そのテンプレートを、私は「プランニングの基本構造」と呼んでいます。すでに顕在化している悪い状態(本質的な悩み/欲求が満たされていない状態)で、問題のある現状から、どんな変化を起こしたいか、望ましい理想的な状態であるゴールを設定します。その状態変化を起こすアプローチとして、戦略(what to do)と戦術(打ち手・施策)を設定します。
速度アップは「根本的な解決策」ではない
この「プランニングの基本構造」に先ほどのエレベーターのケースを当てはめて考えてみます。このケースで、顕在化している悪い状態「エレベーターが遅くて、なかなか来なくてイライラする」という状態から、ゴールを設定すると、望ましい理想的な状態は「エレベーターの待ち時間が短くなり、ストレスがなくなる」というものになります。
すると、打ち手は「エレベーターの速度を上げる」、そのために「もっと速いエレベーターを開発する」というものになります。
しかし、エレベーターのスピードがほんのわずかの時間だけ速くなったとしても、エレベーターの利用者(お客さん)のストレスがなくなるというゴールは達成できない可能性が高くなります。つまり、根本的な解決策(打ち手)にならないことが考えられます。そこで、利用者の「インサイト」を深掘りするのです。
利用者を深く洞察したところ、「インサイト」を発見。利用者の深くて本質的な悩みや欲求は「(エレベーターのスピードではなく)待ち時間が無駄になっていることに対するイライラ」ということを探り当てます。
この「インサイト」から、ゴールを設定すると、望ましい理想的な状態は「エレベーターの待ち時間があっという間に過ぎる」というものになります。そして打ち手は、「エレベーターの待ち時間を感じさせない仕掛けをつくる」、そのために「エレベーターの横に鏡を付ける」というものが考えられるのです。
いきなり深い分析をすることは難しいため、最初は「エレベーターが遅くてイライラする」のような、顕在的な悩み(浅い分析)を、まずは想定してもかまいません。ただ、浅い分析のまま打ち手に移らないことが大切です。
お客さんの「インサイト」を深掘りして根本的な「問題のある現状」と「望ましい理想の状態」を設定できると、それを達成できる根本的な解決策(打ち手)を見つけることができるのです。ぜひ、上述の「プランニングの基本構造」を使いながら、お客さんの「インサイト」を見つけ、効果的な打ち手(解決策)をつくってみてください。
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