「エレベーター来ないイライラ」解決した意外な物 ヒットを出せる人と出せない人の決定的な違い
私は、新卒で電通という会社に入り、マーケティング部門に配属されました。そこでは、クライアント企業のターゲットであるお客さんを調べる調査を、日々行っていました。
入社したての私は、「お客さんの気持ちは、ちょっと調べればわかるでしょ」と高をくくっていました。インターネットはもちろんのこと、市場・トレンド情報や消費者調査データ、事例が格納されたデータベースといった情報源もあり、分析ツールも豊富にそろっていたため、わからないはずはないと思い込んでいたのです。
しかし、その思い込みが大きな誤りを生むワナでした。なぜなら、「インサイト」とは、本来的に表に出てきにくいものだからです。
インターネットや文献に載っている情報はすでに言語化されている情報です。その一方で、お客さん自身が本当に欲しい物は、なかなか言語化されていません。そのため、単に調べてもお客さんの「インサイト」はすぐに見つけられないのです。そのことに気がついた私は、「インサイト」を見つけるために、自分の調べ方を徹底的に見直すことにしました。
「深くて本質的な悩みや欲求」を発見する
ターゲットのお客さんを動かすための「インサイト」を見つけるには、まず、その人の頭の中に入りこむようなイメージで、本音や、何がモチベーションになっているかをつかんでいきます。人間の深く、どろどろとしたところまで洞察するのです。氷山の一角のように、一部だけ顕在化している人の行動・意識への洞察を頼りに、その底に眠る言語化されていない「深くて本質的な悩みや欲求」を発見していくのです。
具体的には、お客さんとなり得る人たちにインタビューを行うと効果的です。対話をしながら質問を繰り返し、本音部分を探り当てていくなどの「洞察」を行うのです。
ところで、正しい「インサイト」を見つけることができないと、なぜ商品やサービスが売れなくなってしまうのでしょうか?
その理由を一言でいうならば、「インサイトを見つけられないと、間違った解決策(打ち手)を選んでしまう」からです。私自身も、インサイトを見つけないままに解決策を考えた結果、間違った解決策にたどり着いてしまったことが何度もありました。
このことをイメージしやすいよう、「なかなか来ないエレベーターの問題」のケースを通して具体的に説明します。
あなたはオフィスビルの所有者で、テナントから「エレベーターがのろくて待ち時間が長い」と苦情を受けていました。
集まった解決策(打ち手)の案は、「エレベーターを取り換える、強力なモーターに交換する、エレベーターを動かすアルゴリズムをアップグレードする」のようなもの。しかし、エレベーターには、これ以上のスピード向上の余地は残されていませんでした。 実は、この解決策(打ち手)は、非常にシンプルなものでした。
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