「結局、ビジネスが生まれるのは大都市」である訳 コロナ禍で地方移転を決めた企業もあるが…

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地方では、なかなかそうはいきません。クルマ社会なので、道路沿い、とくに主要な国道沿いだと大きな看板ばかりが目立ちます。飲食店でも小売店でも、資本のある全国チェーンの店舗が中心。もちろん店員さんにもいろんな人がいるでしょうが、基本的にはマニュアルに則った会話がほとんど。自然はあるものの人がいないので、こと「文化」という側面でみると、意外と金太郎飴のようでつまらない場合も多いのです。

また、電車のように乗り換え待ちなどもないので、「次の電車まで時間があるから近くを散策するか」ということも起きません。一直線に目的地に到着するまで、同乗している人以外で話すのは、せいぜい立ち寄ったコンビニの店員くらいでしょう。

つまり、人との会話も少なく、その地域の資本の食堂や商店、会社に直接お金が落ちることにもつながりにくい構造なのです。

少し引いた視点で、会社だけでなく自治体も含めて考えると、一般的に都市部に比べて人材や使えるお金の少ない地方においては、前述の「価値観の差」を見つけ、多くの人が価値を感じてくれるビジネスあるいは政策のアイデアを出すことが急務です。

そのためには、「価値観の差」を知るきっかけとなる「偶発的な出会い」が重要なのですが、クルマ社会が発達すると、そうした機会も失われます。そして、それによってよいアイデアがますます生まれなくなり、活気が失われ、ますます人やお金が集まらなくなる。そうした悪循環に陥っているのではないでしょうか。

トラムやバス、自転車の利用で街に活気

もちろん、こうした弊害は、都市であっても大きくは変わりません。

世界的にみれば、フランスのストラスブール、ドイツのフライブルク、ノルウェーのオスロなど、中心街では自動車の乗り入れを制限し、トラムや路線バスなど公共交通機関や自転車、徒歩で移動するように誘導することで中心街の活気を取り戻している街が数多くあります。こうした政策は、まさにクルマ社会と文化の関係を反映したものだといえるでしょう。

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いずれにしても、新しい企画を考え大きなビジョンを描く人は、そこに住まずとも、最低限「文化を生む人間」が集まる場所を知っておく必要があると考えます。

そのような観点でいうと、私は「大都市以外にも拠点を持つ企業」の今後に注目しています。前述のように、たとえ本社機能を移転する東京の企業が増えていっても、重要な議題を検討するボードメンバーの行動様式はあまり変わらず、それらの企業の本質も変わらない場合が多いのではないかと私は推測しています。

しかし、大都市の文化を知る人材がほかの地方にも拠点を設けることで、そこで「価値観の差」を発見し、新しいビジネスや企画が生まれる可能性が高まるとみています。

以上のような理由から、私は今後コロナ禍が続き、地方に軸足を移す企業が増えたとしても、「文化」の面でのあり方が大きく変わることはないと考えています。

今後、自分のいる場所、足を運ぶ場所が変わっていったとしても、「文化」の大原則は変わることはない。この点を押さえておけば、場所が変わろうとも、ビジネスパーソンが取るべきベストな行動は、その都度、適切に導き出せるはずです。

別所 宏恭 レッドフォックス株式会社 代表取締役社長

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べっしょ ひろゆき / Hiroyuki Bessho

1965年、兵庫県宝塚市生まれ、西宮市育ち。横浜国立大学工学部中退。独学でプログラミングを学び、大学在学中からシステム開発プロジェクトなどに参画。1989年レッドフォックス有限会社(現レッドフォックス株式会社)を設立し、代表に就任。

モバイルを活用して営業やメンテナンス、輸送など現場作業の業務フローや働き方を革新・構築する汎用プラットフォーム「SWA(Smart Work Accelerator)」の考え方を提唱。2012年に「cyzen(サイゼン/旧称GPS Punch!)」のサービスをローンチ、大企業から小規模企業まで数多くの成長企業・高収益企業に採用される。著書に『ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方』がある。

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