「結局、ビジネスが生まれるのは大都市」である訳 コロナ禍で地方移転を決めた企業もあるが…

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ビジネスは人が多く集まる場の「偶発的な出会い」から生まれる(写真:J6HQL/PIXTA)
今、日本の会社では、サービス残業や涙ぐましい値下げ努力、顧客の過大な要求にひたすら耐える社員……といった「報われない努力」があちこちに見られます。スマートフォン向けのクラウドサービス企業・レッドフォックスを率いる別所宏恭氏は、「こうした現象は、我々日本企業が『いいものを安く作る』という呪縛からなかなか抜けられないことが根っこにある」と語ります。
経営者も働く人たちも結果的に不幸にする「安売りのスパイラル」から抜け出すためには、どんな視点や考え方が必要なのか。2020年代のビジネス・経営・働き方を、商品企画や値付け、生産性など、多様な観点から予測する一冊『ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方』から一部を抜粋・再構成してお届けします。
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大手企業が相次いで地方に本社を移転

2020年9月、パソナグループは兵庫県・淡路島に本社を移転して東京にいる本社関連社員1800人のうち1200人を段階的に同地へ移すことを発表しました。2021年4月には大手芸能事務所のアミューズが山梨へ本社機能を移転するとアナウンスし、東京・渋谷の本社オフィスは縮小。音楽ソフト大手のエイベックスや電通グループの本社ビル売却のニュースも話題になりました。

これらの動きは、新型コロナウイルスの影響を抜きには語れませんが、とくに企業に雇われている会社員にとっては、自分が働く「オフィス」や「現場」の所在地そのものが急に変わってしまう可能性もあるかもしれません。そうしたなかで、私たちはどのように考え、対処するべきなのでしょうか?

結論から先に言ってしまうと、私自身は「これは一部の動きで、大きな変化はない」と考えています。一見、大きく変わるように見えて、その実、多数の社員が自宅でテレワークをしていたのが、移転先のオフィスで仕事をすることになる、という程度の変化にとどまる企業が多いとみています。

先ほど挙げた有名企業の地方移転の動きは、「かつては大都市のオフィスでするしかなかったが、今ならどこでも可能な仕事」のコスト、つまり「高い家賃」の削減を意図しています。

しかし、これらの企業でも、根幹であるミッションの策定や、新しい商品・価値を生み出すためのディスカッションなど、「簡単に答えが出せない議題」の多くは、これまでと同じ場所、たとえば縮小した東京のオフィスで行われるのではないでしょうか。

また、そのようなディスカッションも移転先でするようなら、その企業の経営者や役員は2拠点生活を実施し、移転先で過ごす時間のほうが多い生活スタイルになると推測します。たとえ移転先の風土に根ざしたビジネスであっても、その比較対象として、大都市の「文化」をキャッチする機会を定期的に設けるべきだからです。

それがなぜかを考える前に、ひとつ質問です。市場が飽和しているいまのような時代に、企業の「儲け」を生むのは何でしょうか?

私は企業の利益の源泉は「文化」が生む「価値観の差」だと考えています。とはいえ、やれ「文化」だ「価値観の差」だといっても、なかなかイメージがつきにくいかもしれませんので、もう少し説明しましょう。

次ページ企業の利益の源泉「文化」と「価値観の差」とは?
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