1本300万円のウイスキー「山崎55年」が売れる訳 価値観の差の見極めがビジネスチャンスを生む

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あなただったら国産のウイスキー1本にいくらまで出せますか?(写真:イグのマスタ/PIXTA)
今、日本の会社では、サービス残業や涙ぐましい値下げ努力、顧客の過大な要求にひたすら耐える社員……といった「報われない努力」があちこちに見られます。スマートフォン向けのクラウドサービス企業・レッドフォックスを率いる別所宏恭氏は、「こうした現象は、我々日本企業が『いいものを安く作る』という呪縛からなかなか抜けられないことが根っこにある」と語ります。
経営者も働く人たちも結果的に不幸にする「安売りのスパイラル」から抜け出すためには、どんな視点や考え方が必要なのか。2020年代のビジネス・経営・働き方を、商品企画や値付け、生産性など、多様な観点から予測する一冊『ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方』から一部を抜粋・再構成してお届けします。
1回目の記事 「ターゲットはシニアではなくママ」で大ヒット

マスク高額転売とレコード買い付けは違う

新型コロナウイルスの感染が急速に拡大し始めた2020年の2月以降、国内でのマスクの品薄に乗じて、「マスクの買い占め」が大きな問題となりました。購入価格の5倍、10倍という値段をつけてオークションサイトや店舗で販売するような悪質なケースも数多くみられ、3月中旬には政府がアルコール消毒液なども含めて転売禁止を通達。警察庁の発表によると、その後の約1年で25人が検挙されたといいます。

一方、全国チェーンの中古CD・レコードショップや地方のリサイクルショップなどで「100円均一」のワゴンで売られているようなCDが、インターネットの通販サイトや都市部のマニア向けのCDショップなどでは、「貴重なCD」として数万円の値段で取引されている場合もあります。

販売者のなかには、地道にリサイクルショップめぐりや一般のオークションサイトめぐりをして、「掘り出し物」を熱心に探す人もいます。こうした人たちと、マスクを買い占めて儲けた人たちとの違いは、いったいどこにあるのでしょうか?

誰もが必要なのに需要に供給が追いついていないモノを、あらゆる手を尽くして買い占め、定価の数倍で高く売るような行為は、「高額転売」であって、まったく褒められたものではありません。

しかし、このCDの例はまったく同じモノでも、「100円、200円なら、まぁ買ってもいいかな」、あるいは「二束三文で構わないので、家にある古い邪魔なCDを引き取ってほしい」という価値観の人(あるいはそうした人向けに商売をしている人)もいれば、「本当に価値あるモノなら数万円を出しても買いたい」という価値観の人もいることで成り立ちます。

いわば両者の「価値観の差」によって商売をしているといえるでしょう。

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