テレビ局が「40代向け番組作り」に躍起になるワケ 最重要指標は「世帯」ではなく、「コア視聴率」

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(図版:国立社会保障・人口問題研究所公式サイトより筆者作成)

2020年の人口ピラミッドでは、全体がぐんと上に持ち上がっている。団塊世代はもう70代、団塊ジュニアは40代後半だ。

ネット世代とテレビ世代は10年前からそのまま10歳持ち上がったと想定する。若い頃のメディア接触はその後も続く傾向があるからだ。すると先ほど設定したテレビ世代とネット世代の境界線は35歳になる。ネット世代(=35歳未満)は約32%、テレビ世代(=35歳以上)は約68%。少数派だったネット世代が勢力を増やした形だ。

(図版:国立社会保障・人口問題研究所公式サイトより筆者作成)

さて、先述のコア視聴率は49歳までだった。そうするとコア層がずいぶんネット世代に占められることになる。また団塊ジュニアがいるため、40代の比重がずいぶん高い。コア層約5100万人のうち約1800万人が40代だ。そして団塊ジュニアはもう、40代後半。50歳まであと一歩なのだ。

コア視聴率から団塊ジュニアが毎年外れていく

さてここで気づくことがある。コア視聴率にも、以前の世帯視聴率で起こった問題が起きていないか、ということだ。世帯視聴率では高齢層の視聴に左右されてしまった。同じように、コア視聴率も40代に強く左右されているのではないか。人数が多いうえに、下の世代よりずっとテレビが好きでよく見ている。コア視聴率≒40代視聴率になっていないか。

先ほど、一時期は第7世代がもてはやされたが、いまは第6世代が重宝されていると書いた。それはつまり、人数が多くテレビが好きな40代が、年齢の近い芸人を好むからではないだろうか。

松本人志が強い影響力を持つのも、40代が多感な時期に時代を作ったのがダウンタウンだからとも言えないか。実際、40代の芸人は「松本さんに憧れてこの世界に入りました」とよく言っている。どれもこれも、コア視聴率における40代の影響力の強さがもたらすことに思える。

そして次に考えたくなるのが、10年後の人口ピラミッドだ。

団塊ジュニアも完全にコア視聴率のくくりから外れ、ほぼ完全にネット世代に占められる。デジタルを中心にメディア接触してきた世代が社会の中核になり、テレビ視聴で重要な層になるのだ。

ここに至る前の2020年代前半を想像してみよう。大きなテレビ好き集団、団塊ジュニアが毎年毎年コアから外れていく。さっきの推論どおりなら、毎年コア視聴率の水準がガツーンガツーンと減っていくのだ。コア視聴率の高さを誇っていた番組が、あれ?どうしたんだ?ということになる。

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