日本株がちょっぴり上がってもいいと考える理由 「利上げ騒動」のドタバタはいったん終わった

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実は同日のOPECプラス会合では、原油消費国などからの増産加速要請に対して「40万バレルの増産ペースを変えない」との決定があったにもかかわらずだ。こうした「利上げ観測や原油価格高騰懸念」の後退を受けて、10月下旬には1.7%に迫る上昇を示していたアメリカの10年国債利回りは、先週末は1.45%と、1.5%をも下回る低下となっている。

騒ぎが一巡、株式市場の注目は景気と企業収益へ

だが、とくに実体経済面で、インフレに関する環境が大きく上にも下にも変化したわけではない。アメリカなど主要な諸国における人手不足が賃金インフレを発生させるとの懸念は、完全には払拭できていない。

とくにトラックや船の輸送が人手不足で十分に機能していないという状況も指摘されており、品不足による物価上昇圧力も残っている。原油などのエネルギー価格も、一時の高値から反落はしたものの、水準自体はまだ高い。

また金融政策面では、前述のイングランド銀行は「今後数カ月のうちに政策金利の引き上げが必要だ」と表明している。連銀のテーパリングも、事前に予想されていた通りであっても、緩和を縮小することには変わりはない。

ということは、債券市場における波乱は心理的なドタバタという面が大きかったといえる。それはともかく、騒ぎが一巡したとすれば、株式市場の注目は金利動向を離れ、「王道」である景気と企業収益の動向に向かおう。実際、アメリカの株式市場は企業収益の改善を好感する展開が続いており、主要な株価指数はたびたび史上最高値を更新している。

それに対して、日本株はいまひとつパッとしない。それでも、企業収益は改善している。大手新聞社によると、すでに決算と自社の収益予想を発表した784社(3月期決算企業の5割弱)で集計すれば、今2022年3月期の純利益予想は前年度比45%増。これは、5月時点の28%増益見通しや8月時点の36%増益見通しを上回っている。

岸田文雄内閣も、11月19日頃までに経済対策を取りまとめ、12月の国会に補正予算案として提出する方針だと伝えられている。何か対策を打てば、ドカンと景気がよくなって株価が爆騰する、などということはありえない。それでも、対策の発表が株価の悪材料にはならないだろう。

今年内の日本株は、上昇期間についても上昇幅についても「あと一息だけ」上値を伸ばすものと予想している。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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