9月29日に行われた自由民主党の総裁選挙で、岸田文雄氏が総裁に選出された。10月4日に第100代首相となることが確実な情勢だ。
河野太郎氏が残した「サラリーマンへの教訓」
票読み的には「決選投票になると岸田氏が強いのではないか」との下馬評はあった。だが、1回目の投票から1票差ながらトップに躍り出る、予想以上の差をつけた勝利だった。
河野太郎氏の議員票での不人気にはいささか驚いた。「発信力」「選挙の顔」といったアピールポイントよりも、日頃の「付き合い」「面倒見」といった要素の不足が響いたのだろう。
企業の社長レースでも、辣腕で知られて、知名度が高く、世間や顧客からの評判が良く次期社長の本命視されていた人物が、社内の人付き合いの悪さで社長になり損ねるケースがある。人事の直前に、長老に挨拶に行っても手遅れだ。今回の河野氏はこれに近いのではないか。多くのサラリーマンには、教訓となる総裁選だった。
政策面では、河野氏が、全額税財源による「最低保障年金」のメリットをうまく訴えられなかったことが残念だった。「財源が必要なので増税する」というイメージが先行した。
基礎年金分の負担がなくなるのだから、勤労者の「手取り収入」が低所得層では毎月1万数千円増えることを効果的に伝えることができなかった(現在半額本人負担の基礎年金の保険料は1万6610円だが、税率に応じて手取りの増加額が変わるはずだ)。
現在の社会保障をそのままに、特に若い世代の低所得な勤労者に向けて事実上「月額1万数千円のベーシックインカム」を支給できる素晴らしい再分配政策だった。
国民の手元にお金が渡るのだから、徴収できる財源(高市早苗氏によると12兆3000億円)は十分存在する。適切な時期に、お金持ちに対してより多く課税することで、再分配の効果を得るといい。この政策への反対者は、実質的に低所得勤労者への「再分配」に反対しているのだ。
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