日本株がちょっぴり上がってもいいと考える理由 「利上げ騒動」のドタバタはいったん終わった

拡大
縮小

さらに同28日には、ECB(欧州中央銀行)が理事会を開催した。ここでは金融政策の変更はなかったものの、理事会後の記者会見で、クリスティーナ・ラガルド総裁は「インフレが想定より長く続く」との考えを表明した。これが「ECBが緩和縮小を早める」との思惑を浮上させ、欧州債券市場やユーロ相場が一時騒然となった。

こうした中央銀行の姿勢変化の背景には、インフレ懸念があるのだろう。象徴的には原油価格が注目されてきた。

このところはOPECプラス(主要産油国で構成される会合)の減産縮小(増産)の姿勢が、原油価格上昇の材料だとされていた。すなわち、OPECプラスは、1カ月当たり日量40万バレルずつ増産する方針だが、この増産幅を拡大するとの期待があった。しかし増産ペースが変更されないため、原油価格下落の思惑が裏切られた、との理屈だ。

原油の指標であるWTI先物価格は、終値ベースで10月26日には1バレル=84.65ドルの高値をつけた。

なぜあっという間に騒ぎは沈静化したのか

ところがこの騒々しさは、先週にいきなり沈静化した。11月3日には、アメリカのFED(連銀)が11月からのテーパリング(量的緩和の縮小)の開始を公表した。しかし市場は年内のテーパリングの開始は織り込み済みだとして、無風で通過した。

イギリスの中央銀行であるイングランド銀行については、11月4日の金融政策委員会で利上げが決定されるとの観測が広がっていた。これは、同行のアンドリュー・ベイリー総裁がインフレ率の上昇を受けて「行動しなければならない」と、10月に強く利上げを示唆する発言をしていたためだ。事前に債券市場では、中短期債の利回りが上昇していた。

しかし、実際の金融政策委員会では、政策金利の据え置きが決定された。同行の金融政策は、総裁や副総裁、政策委員ら9名の多数決で決定されるが、ベイリー総裁自身も据え置きに投票したと報じられた。

投資家は慌てて中短期債を買い戻す羽目となって、「ベイリー総裁にはしごを外された。ベイリー・バッドだ」とのダジャレが広がったようだ(筆者の妄想)。

このイングランド銀行の決定を受けて、中央銀行の利上げラッシュになるとの観測に歯止めがかかった、という報道も目にする。また、利上げ観測の背景にあった原油価格の上昇も、足元では価格反落が生じている。11月4日のWTI先物の終値は1バレル=78.81ドルと、一時80ドルを割り込む動きとなった。

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