小学4~6の3割超が「やせ願望」命にも関わる深刻 「摂食障害」で医療機関を受診する10代前半が増

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「摂食障害はもともと女性が9割の病気だが、回避・制限性食物摂取症は男児の割合が多い。低年齢化の要員の1つに、自閉症スペクトラム障害(ASD)など発達障害の増加が指摘されている。発達障害の約8割は男児といわれており、ASDの特徴として、強いこだわりがあげられる。

幼少期の食への強いこだわりで食べられるものが少なくなり、栄養不足やカロリー不足になり、摂食障害に発展する場合がある。また『コロナ太りに気をつけよう』とニュースなどで聞いた場合、それを信じて実践してしまうこともある」(鈴木氏)

不安が引き金となるのは、ASDに限らず、子ども全般に起こることだと鈴木氏はいう。

「人間関係や家族の悩みから、食べられなくなる子もいる。そういう子はやせたいと思っていないし、むしろ食べなければと思っているのに、不安や恐怖から食べられない。

摂食障害は複数の要因が重なって症状が現れる。本人の気質や家族背景、幼少期からの不安や不満などをうまく出せないまま思春期に差し掛かり、出口として見出したダイエットで自らの体重をコントロールすること以外に、達成感を得られる選択肢がなくなっていく」

しかも今はコロナ禍。子どもたちは大人が不安に襲われていることを感じ取り、自分たちも対象がわからない不安に覆われている。

鈴木氏は「遊びが制限され、部活は禁止、修学旅行もなくなり、さまざまなことが制限されていることへの不満がある。その不満や不安があっても、何かを達成したり、成し遂げたりできない世の中になっている」と、コロナ禍に置かれている子どもたちの状況を、摂食障害発症の観点からも危惧する。

「子どもは環境の生き物」

では、手遅れになる前に、親はどのように子どもと関わればいいのだろうか?

「今、子どもたちの孤食が増えている。一緒に買い物をしたり、一緒に食事を作ったり、一緒に食卓を囲むように、家族の会話は非常に大切。食卓は食事をするだけでなく、親が子の様子をうかがい、子が親に何気なく相談できる場でもある。

思春期からいきなりは難しいので、幼少期から家族で食卓を囲む習慣を作ることが大事。一日一食だけでも食卓を囲むことができるよう努めることや、難しい場合は交換ノートによるやり取りも1つの方法」(鈴木氏)

子どもたちが憧れるアイドルやモデルはみんなやせていて、インターネットやSNSはやせ賛美が溢れている。

「子どもは環境の生き物。それぞれの“個”はまだ育っていないので影響を受けやすい。女性は、幼稚園児からおばあちゃんまで、みんなやせ願望はいくつになってもなくならない。やせ願望があることが病気なのではないので、それをゼロにすることは目指さなくていい。やせ願望があっても健康的な食行動が取れていれば大丈夫」

もし気になる場合は、インターネットなどで成長曲線を入力してみて、不自然なカーブを描いていないか、大幅に外れていないかチェックしてみるのも有用だという。

小児期のやせや、極端なダイエットにより低栄養期間が長期化すると、成長障害だけではなく、無月経、骨密度の低下、便秘や低血糖などの身体的合併症につながり、将来の妊娠や出産にも影響する。

子どもたちの健やかな成長のためにも、まずはみんなで食卓を囲むことから始めてみたい。

吉田 理栄子 ライター/エディター

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よしだ りえこ / Rieko Yoshida

1975年生まれ。徳島県出身。早稲田大学第一文学部卒業後、旅行系出版社などを経て、情報誌編集長就任。産後半年で復職するも、ワークライフバランスに悩み、1年半の試行錯誤の末、2015年秋からフリーランスに転身。一般社団法人美人化計画理事。女性の健康、生き方、働き方などを中心に執筆中。

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