小学4~6の3割超が「やせ願望」命にも関わる深刻 「摂食障害」で医療機関を受診する10代前半が増

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食べられていない子は、水分摂取量も十分でないため、脱水症状などで意識障害やけいれんも起こる。また、肥満度が-35%を下回ると、臓器や筋肉が壊れ、多臓器不全に陥り命に関わることもあるという。かつ、「自分は病気ではない」と本人に自覚がない病識の欠如が摂食障害の特徴で、受診が遅れる要因にもなっている。

「やせたいからといって、わが子は摂食障害までにはならないだろう」と思っていても、やせたい気持ちの強さだけではなく、親にはわからない原因が積み重なって発症するのが摂食障害の怖さだ。

「やせたら陸上のタイムがよくなった!」に潜む危険

鈴木氏によると、「典型的なやせ願望からくるタイプの摂食障害は、真面目で頑張り屋の子に多い傾向にある。ダイエットは三日坊主で終わる人がほとんど。やせられるのは、ストイックで頑張り屋の子。

ほとんどの人ができない中で達成すると、友だちからも『すごーい』と称賛され達成感が生まれる。没頭している間は不安を感じず、やせたら結果と結びつき、称賛されるという経験になっていく」。

また、大人の「やせてキレイになりたい」というのとは違い、「やせたら陸上のタイムがよくなった」など部活動の成績向上や高評価につながり、やせたこととタイムに因果関係はなくても、「やせたことで得をした」経験からハマっていく場合が少なくないのも子どもたちの特徴だ。

最近では給食をきっかけに食べられなくなる子も増えている。昔と違い「残してはダメ」「全部食べなさい」という指導をしている学校はほとんどないが、

「授業時間を確保するためなのか、給食の時間が短くなっている。最近は黙食ということもあり、食事が大事にされていない。給食の時間が短くなっても、全員がパクパク食べられる子ばかりではなく、ゆっくり食べ切る子もいる。

真面目な子ほど、ウッと吐きそうになったりしながらも、一生懸命食べなきゃと思う。そこから給食が恐怖になり、給食がきっかけで食べられなくなる子がいる。食べ終われない自分はダメな子だと、苦しくなってしまう」(鈴木氏)

頑張って、頑張って、適応できずに発症するというのが典型的なパターンだ。

それ以外にも、近年摂食障害が低年齢化している原因があるという。

日本小児心身医学会のワーキンググループの研究よると、15歳以下の摂食障害で、いわゆる太りたくない、食べたくないという典型的な『神経性やせ症』は71%。残り3割はやせ願望のない『回避・制限性食物摂取症』だった。

やせ願望がなくても、摂食障害になるケースが3割もあるのだ。

回避・制限性食物摂取症は、2013年にアメリカ精神医学会で「やせ願望のない摂食障害」として新たに分類わけされ、診断基準に入った比較的新しい概念だ。

例えば、風邪などで嘔吐したり、嘔吐時に窒息しそうになるなどの体験をきっかけに、強い恐怖心から食べられなくなったり、強いこだわりや偏食から栄養失調になるパターンだ。

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