住む場所の変化が「シン・街道資本主義」を生む訳 「街」のメディア化が導く「鉄道資本主義」の終焉

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かつて、マクルーハンのこの論法はいささか突飛なものに思われた節もありました。何でもメディアかよ、というわけです。けれども、インターネットとスマートフォンの普及は、マクルーハンの予言が間違っていなかったことを証明しました。

あらゆるサービスがすべてアプリになり、まさにメディアとして手中に収まっている。自動車も住宅もインターネットに常時接続され、メディア端末となり、メディア発信の主人公となっている。

マクルーハンの示した分類には入っていませんが、街はいうまでもなくメディアです。街は、人間の営みという「コンテンツ」が流れるプラットフォームであり、ハードウェアです。

街というメディアの上には、歴史的にさまざまな人間の営みが地層のように重なってきました。古代の部族社会、徒歩と馬で移動する街道社会、そして、鉄道が張り巡らされた鉄道社会、自動車と道路がつくった自動車社会、そしてさらにそのうえにインターネットという網がかぶさったわけです。

シン・街道資本主義の担い手は自動車である

自動車はカーナビゲーションや自動運転システムと連動し、インターネット資本主義とつながりつつ、鉄道以降の新しい交通世界である、シン・街道資本主義の担い手にもなります。

コロナ禍を契機に、リモートワークが一般化し、インターネットを活用した在宅仕事や在宅教育が標準になる。すると、インターネット資本主義とシン・街道資本主義とが連動した、あたらしい街のかたちや働き方、生き方が生まれてくる。

16号線沿いの千葉県柏市の柏の葉キャンパスでは、開発主体である三井不動産が近隣住民でもあるビジネスパーソン向けのリモートワークオフィスサービスを展開しています。

世界最大の街である「東京」そのものが過疎化することは、震災や大規模洪水といった自然災害が起きない限り、まずありえないでしょう。

ただし、あまりに人口が集中し、さらに通勤通学のラッシュが一向に解消されていなかったのも事実です。また、いま触れた自然災害リスクと人口の過度な集中は、相性が悪い。

東京の魅力や便利さを享受しながら、個々人が自分の好みの暮らしを選ぶ。そんな時代に、インターネット資本主義とシン・街道資本主義の共創による、新しい街づくりや働き方、学び方の改革が今後進んでいくはずです。

柳瀬 博一 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院 教授

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やなせ ひろいち / Hiroichi Yanase

1964年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社、「日経ビジネス」記者を経て単行本編集に従事。『小倉昌男 経営学』『日本美術応援団』『社長失格』『アー・ユー・ハッピー?』『流行人類学クロニクル』『養老孟司のデジタル昆虫図鑑』などを担当。「日経ビジネス オンライン」立ち上げに参画、広告プロデューサーを務める。TBSラジオ、ラジオNIKKEIでラジオパーソナリティとしても活動。2018年3月日経BP社退社後、現職。共著書に『インターネットが普及したら僕たちが原始人に戻っちゃったわけ』『混ぜる教育』など。

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