住む場所の変化が「シン・街道資本主義」を生む訳 「街」のメディア化が導く「鉄道資本主義」の終焉

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東工大には特命教授として池上彰さんがいらっしゃいます。池上さんの授業もZoomで行われます。学生たちは、テレビで池上さんの番組を見るように池上さんの授業をZoomで受けるわけです。しかも、テレビと異なり、Zoomでは池上さんと学生の間でインタラクティブなやりとりができます。もはやテレビの機能を超えた映像体験を個人が簡単にできるようになってしまいました。

仕事の会議と、大学の授業と、テレビ番組のワイドショーが、おなじ「かたち」になった。仕事や教育が「だれでもマスメディア」化した瞬間に、日本人の大半が居合わせたわけです。

20世紀の首都圏の暮らしは「鉄道網」というレイヤーの上に展開されました。企業の本社や行政機関、繁華街は都心に配置され、郊外へ鉄道が伸びました。鉄道沿線には住宅が開発され、不動産価格は都心への距離と反比例しました。多くの人にとって、住まい選びにおける最も重要な条件のひとつが「通勤時間」になりました。

そんな「鉄道資本主義」がいま、変わろうとしています。私たちの暮らしに「インターネット」のレイヤーが重なり、ビデオ会議サービスなどを皆が利用するようになり、毎日定時に通勤する必要がなくなると、これまで鉄道網が築いてきた、都市の構造や場所のヒエラルキーが揺らいできます。

住まい選びの条件として、「通勤時間」よりも、家の広さだったり、教育環境だったり、趣味嗜好のほうが重要になったりします。都心の賑わいが好きな人は今後も都市部に住み続けるでしょうが、たとえば自然に近いところやそこそこ大きな家に住みたい、というニーズを持つ人は、郊外を選ぶ確率が高くなるはずです。

首都圏だけを中心に考えると見えなくなる事実

しかもすでに首都圏郊外には、生活をするのに十分なインフラが整っています。そのインフラを支えているのは、鉄道ではなく、自動車です。

東洋経済オンラインでも連載を持っていらっしゃる久保哲朗さんが、とても興味深いレポートを自社サイトで出しています。2010年の国勢調査をもとにした都道府県別の鉄道通勤・通学率です。

こちらの地図をみると明白です。通勤・通学手段として鉄道が50%を大きく上回っているのは首都圏一都3県を除くと、京都・大阪・兵庫の京阪神プラス滋賀、残りは名古屋のある愛知県、福岡・北九州のある福岡県です。日本の大半は、普段の通勤も自動車がメインなのです。

意外なようですが、日本で1世帯当たりの自動車保有台数が1台を超えたのはバブルが崩壊したあとの1990年台半ばです。その後も日本の自動車保有台数は絶対数では一度も減ることはありません。首都圏の東京、神奈川、埼玉、千葉だけを中心に考えると見えなくなってしまう事実です。

首都圏の人々の移住が目立つ16号線エリアは、地方と同様、半分自動車社会です。都心への通勤には鉄道を使っていても、地元で買い物をしたり、遊んだりするときは、もっぱら自動車を使う。

2000年代に入って、日本各地で起きているのは、街道や国道などに新しい商業施設が集積し、駅前よりも圧倒的に栄えている「シン・街道資本主義」ともいうべき市場変化です。

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