「ロビ」生みの親が語る、開発の知られざる裏側 高橋智隆氏に問う日本のロボット普及への道筋

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だが、製品がまだない段階で資金調達できるクラウドファンディングのメリットが、ここでは裏目に出た。できるだけ多くの予約注文を集めようと、各スタートアップは魅力的なプロモーション映像を作ることに力を注ぎ始め、自分たちが作れる以上の機能やデザインを備えたロボットが実現するかのように人々を錯覚させてしまったのだ。

「結局、購入者の手元に届くプロダクトは期待を裏切るものとなり、失望が広がった。ついには最初から製品を作る気がないのにプロモーションだけでお金を集める詐欺まがいのプロジェクトまで出てきて、クラウドファンディングへの信用不安も拡大し、ハードウェアスタートアップは軒並み潰れる結果となりました」

「ロボットをロボットとして作ろうとしないこと」

こうしてハードウェアスタートアップ各社のロボットブームは、あっという間に終焉を迎えた。だがロボットに対する社会のニーズは失われるどころか、むしろコロナ禍を機にますます高まりを見せている。今は、真剣にロボットに向き合う会社だけが生き残っている時代とも言い換えられるだろう。

人との接触を減らしたり、リモートワークを拡大したりするには、さまざまな現場で人間の代わりに作業やオペレーションを担うロボットがどうしても必要だ。人と会う機会が減って孤独を感じる人が増え、対話や触れ合いが可能なコミュニケーションロボットに期待する声も大きい。

一過性で終わったブームの反省を踏まえてこれから考えるべきことは、「どうすればロボット産業の持続的な発展を実現できるか」だ。この課題を解決するカギは、「ロボットをロボットとして作ろうとしないこと」にあると高橋さんは話す。

「私がコミュニケーションロボットの『ロボホン』を作ってわかったのは、ロボット用に最適化した部品でプロダクトを製造するのは無理だということ。なぜならスマートフォン用の部品と比べたら、値段も性能も太刀打ちできないからです。

ハードウェアの制作は“数がすべて”の世界です。100台や1000台しか売れる可能性がないプロダクトのために専用のバッテリーやカメラを作っても、100万台売ることを前提に作られるスマホ用のバッテリーやカメラの性能には遠く及ばない。しかもコストはロボット用の100分の1や1000分の1です。

だから『ロボホン』のようなコミュニケーションロボットを普及させるには、スマホのサプライチェーンに乗っかるしかありません。スマホの部品を使い、スマホのソフトウェアを搭載し、スマホの販路を利用して、スマホの販売代理店で売る。現時点ではこれが最善策だと考えています」

モバイル通信サービス対応で、電話もできるモバイル型ロボット『RoBoHoN(ロボホン)』
(写真:エンジニアtype編集部)

ロボットという未知のプロダクトに対する一般消費者の心理的ハードルを下げるためにも、人々が慣れ親しんだ既存製品をベースにする戦略が有効だという。

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