そういうのも含めて、マルシェはマルシェでまたオンラインとは全く違うコミュニティや場が形成されていてとても面白いと思った。ただ、確かに高齢者が多い印象はあって、このまま廃れていくのはもったいない気がした。
エマニュエル : こういった変化は経済だけじゃなく、町の構造、都市計画、社会学全体にもかかわることになる。
フランスにおいてマルシェは、伝統的にも町にとっては不可欠な場であった。市場の人やお客同士の出会いの場でもあり、マルシェ周辺のカフェやレストラン、パン屋などの商店を活気づける場でもあった。それが、マルシェのお客が離れていくことによって、その地区全体の客離れにつながる。
そして町での人々の関係も変わることになる。例えば、僕がマルシェに行くと、普段の生活ではかかわりがなかったり、周りにはいないような人々と交流することができる。市場の人であったり、農家の人やお客さんたちなど、そこでしか知り合う機会がないような人々との社会的なつながりを結ぶ場でもあるといえるね。
だからこのような機会が減るにつれて、社会的な「共存」の意識にも影響を与えることになる。もしも僕が自分の周囲の人とだけ交流をすると、その分視野も狭くなり、自分と同じ国や町にすむそれ以外の人たちへの共感が薄れてしまい、結果としてそのことが選挙の時の投票の選択にも影響をあたえうるかもしれない。
マルシェの小さくない「存在意義」
くみ : 本当にそのとおりよね。パリのような都市であればなおさら、外国人や一時滞在者も多くて、ただでさえ地元のコミュニティを形成しにくいし、持続させにくい。そういうところでマルシェや対面での小規模な商売は、ちょっとした挨拶から毎週の世間話まで、単に必要なものを売り買いするだけではない役割を担っていると思う。
特に、お店に入ると買う気がなくても必ずお店の人と「ボンジュール」と言い合って挨拶を交わす習慣があるフランスでは、定期的に行くそういうお店での会話やちょっとしたコミュニケーションが生まれやすいというのもあるけどね。
だからこそ余計に社会における存在意義が大きいと思う。小さい子どもを連れた家族で週末にマルシェに行ったりするのもよく見かけるけど、ありとあらゆる生鮮食品の実物を見るだけでなく、そこで客やお店の人、時には生産者も含む皆が何かしらおしゃべりしながら買い物をしている中で育つと、そこから学べることもありそうだよね。
エマニュエル : そうだね。でも僕は別にオンラインショッピングの類いが社会にとって害になるなんてことは言わないよ。