フランス人の「消費行動」が劇的に変わった事情 生鮮の宅配普及がマルシェに与える影響は?

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これにはテレワークの浸透が影響しているわけで、在宅率が高くなったからこそ、宅配を受け取るのが以前よりも便利になった。最近では、テレワークができない人たちのためにも、20時以降でも配達してくれるサービスも増えてきているよ。くみはこういうサイトを利用したことはある?

くみ : そう、本当にフランスでも増えたよね。コロナ前からだけど、フランスの大手ミネラルウォーターが宅配サービスを始めたのは画期的だなと感じた。でもいまだに指定の日時に届かないなんてことが数回に1回あるのがフランスらしいというか……。

ロックダウンになってからは、生鮮食品の宅配サービスを利用してみた。まさにエマニュエルが話していた、パリ市が支援するマルシェ(市場)の新鮮な野菜や果物を宅配してくれるサービスで、私が利用したのはズッキーニやトマト、りんごなど一般的な野菜と、果物のおまかせの詰合せセットで、値段からしてもお得感があった。

それにコロナにかかわらず、ずっしり重い野菜や果物を買って帰るのも一仕事だから、宅配してくれるのはとても助かった。ビオの野菜と果物が各1セット15ユーロほどで配達手数料に3ユーロかかったから、2セットで34ユーロ弱だった。

冒頭の野菜セットと合わせて、送料込みで34ユーロだった(写真:佐々木くみ氏提供)

ネット通販普及でマルシェはどうなる?

エマニュエル : この変化は経済的にもフランス社会に影響を与えるものだと思う。例えば、町によくあるような野菜や果物を売っている小さな店や、週に2、3回は開かれているマルシェなんかは突然競合相手が増えて客が減ることになる。ただ、マルシェを利用するのは基本的に高齢者層で、この層はあまりネット通販に慣れておらず利用したがらないので、いきなり客が減るということにはならないだろう。

でも今の20、30代が定年退職するぐらいの年齢になったとして、その人たちがいきなりマルシェを利用しだすとは考えにくいので、徐々にではあるけれど、マルシェは将来縮小していくのかもしれないよね。

くみ : そうね、私もさっき話した宅配マルシェのサービスを利用してとても便利だったから高齢者の知合いにおすすめしたのだけど、「いざとなったら利用したいけど、自分はやはり店頭で商品の新鮮さなどをしっかり確認してから買いたいから、これからも用心しながらマルシェに行くつもり」と言っていた。

一方で、コロナで店内飲食が禁止されていた期間、各レストランは持帰り用のお料理を工夫して作っていたところも多いけど、やはりパリ市の支援で、お店の近所のマルシェに週2回ほど場所を割り当てられて出店してお惣菜やお菓子、普段お店で仕入れているオリーブオイルなどを売っているレストランもあった。

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