楽天市場とは「究極の対面販売」である

『あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか』 著者に聞く

仲山進也(なかやましんや)●仲山考材代表取締役。1973年北海道生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。シャープを経て、1999年に社員約20名の楽天へ移籍。楽天の初代ECコンサルタント9人の1人。2000年に「楽天大学」を設立、eコマースのみならず幅広く、楽天市場出店4万1000社の成長パートナーとして活動中(撮影:尾形文繁)

楽天市場の店舗で実践されている、大手企業と競争しないで楽しくファンを増やす「究極の対面販売」とは。

──どうすれば顧客の支持を集める「売れる店」になれるのでしょうか。

五つのやってはいけないことがある。(1)売れている物を売ってはいけない、(2)ターゲット客を攻略してはいけない、(3)競合対策をしてはいけない、(4)スケールメリットを強みにしてはいけない、(5)勝つためのスキルを磨いてはいけない。マーケティングの教科書で推奨されている戦略の逆を行くことだ。

戦略という言葉を正直に読めば「戦いを省略する」と読め、いかに戦わずに済ませるかということになる。推奨されている戦略をやっていたら、いつまで経っても楽しい商売にならず、消耗戦を繰り返すことになってしまう。大手ネット企業と戦わない商売にしなければならない。

楽天市場で実践しているノウハウとは?

──消耗戦?

頑張って無理するのをやめ、やりたいことをやって喜ばれる道で食べていけるようにする。楽天市場で売り上げを手っ取り早く上げようと思ったら、「五つのべからず集」の逆、戦うマーケティングをやればいい。だが、それで一時的に売り上げが上がっても、持続させてハッピーになれる人は少ない。そうでない人たちをたくさん見てきている。

一般にネットショップは、頼めばすぐ商品が届くという自動販売機のようなイメージがある。楽天市場は4万1000店の小さなお店の集まり。4万人を超える面白おかしい店主のおじさん、おばさんがいて、その人の魅力が商品に重なった形で買われるスタイルが楽天らしさだ。軌道に乗る人と乗らない人の違いもそこにある。

──「五つのべからず集」の順守でやっていけますか。

いずれも、普通には逆にやれといわれている戦略だ。しかし普通の戦略とは、ナンバーワンの人がやっていること。つまり、そのまねをしなさい、そうすれば今よりは少しは上に行けるよ、となってしまう。だが、こちらが少し上に行ったとしても、ほかの人もその間に自分よりさらに進んでいるのが常で、いつまで経っても抜け出せない。

たとえば、楽天のランキングを見て、売れている物を仕入れ、いちばん売れている値段より下げたらもっと売れると頑張る。でも、売れたと喜んで、決算を締めてみたら、大赤字。売れている物を売ると、必ずそうなる。

──ターゲット客の攻略は駄目ですか。

それをやっている人にお客さんはどういう人かと聞くと、うちは20~30代の女性といった答え方をする。いい商売をしている人はそうは答えない。印象に残っているお客さんの話をしてくれる。ターゲットを語っている間は、一人ひとりではなくて、客を固まりとして見ている。そうして、狙いを定めた固まりに売る形で、いちばん注文の来る撃ち方はどのようなものかというような発想になってくる。ターゲット客や攻略という発想自体が駄目。お客さんは攻略するものではなくて、一人ひとりとお付き合いすると考え結び付いていかないと、長続きするいいお客さんにはなってくれない。

──スケールメリットも強みにならない……。

だんだん売り上げが大きくなってきて、仕入れのロットも大きくなってくると、安く買えて、値段ももっと下げられるようになると発想する。しかし、同じジャンルにすごく大きい店があるのが明らかならば、スケールメリットを磨いて伸ばしていっても強みにはならない。

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