楽天市場とは「究極の対面販売」である 『あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか』 著者に聞く

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──結局、ネットショップは店主の魅力に懸かっている?

今の世の中、物ではそんなに差はつかない。売り上げがちょっとでも大きくなってくると、会社らしくしないと、と思い始めてしまう。社長の中には大して大きくないうちに前線から引き下がろうとする人がいる。それでは普通のお店になってしまう。中小企業の強みは社長のキャラ。社長に限らず人を前に出していったらいい。

──「変人」の店主というあり方もよいのですか。

「変人」という言葉で表されるあり方もありかなと思う。自分の変わっているところ、面白いところをわざわざ封印して、ことさらビジネスらしく見せようとする。これではもったいない。こんふうに品よくしなくてもよかったのだなと気づくと、楽に自然体で面白みが発揮できる。

「ありのまま」というのは「そのまま」とは違う。要は、自分の持っているものを磨いていき、彫刻のような感じで形作られたもの。これがありのままの自分の姿で、ほかの人の型にはめ込むものではない。

69歳で出店、いま82歳の店主も

──12の実践事例が収録されています。

仲のいい1000人ぐらいの店主さんの中から厳選した。人となりをよく知っている人しか紹介していない。日々の実践によって同じになっていったのか、「五つのべからず集」を立証する人たちばかりだ。82歳の人もいるし。

──始めたのはおいくつですか。

69歳のときに風呂敷専門店を始め、ファンクラブができている。

このほか1本498円の缶ビール500本を1分19秒で完売したり、スーパーで買えるソフトドリンクを価格競争せずに月商7000万円も売ったり、さらには数年で11カ国に300店舗を超えた洗車用品店があったり……。

──本書の選外で今、特筆するとすれば。

いっぱいあって選ぶのに苦労するが、たとえば、国産材の学習机を売る広島県府中市の家具屋さんはどうだろうか。もともと婚礼家具で栄えた土地柄だが、海外品の2~3倍の値段で売っている。ユニークなのは「つくえ、つくろう」と題する、材料の切り出しを含め実体験させる親子ツアーだ。日本のものづくりを学べるし、命名式や親から子どもへの贈呈式もある。

──業績も大事ですね。

もちろん楽天では売り上げも重視している。スーパーの2倍は高い卵の160個入りが売れ筋の卵屋さんの場合は、需要の波をならすために楽天に出店し、ある時点で目的が達成された。このケースでは農水省の6次産業化に乗って、卵を材料にしてケーキ製造などに進出。6次産業化で頑張る女性経営者の例として、安倍首相が視察に行った。売り上げを追っていない人が結果的にいい方向に行って、売り上げが伸びる。

「五つのべからず集」によって顧客との関係性を深めると、ビジネスは奥が深まり、広がるものだ。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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