「消防士は火事の予知夢を見る」説の本当の理由 夢にまつわる不思議を心理学の立場から解説

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予知夢を見たことがありますか?(写真:coffee7 / PIXTA)  
「悪夢をみないようになれる?」
「予知夢ってある?」
夢は誰もが見るものの、謎多き存在ではないでしょうか。
新著『夢を読み解く心理学』では、心理学の先生と3人の教え子A、B、Cとの会話形式で、そうした「謎」を解説しています。本稿では同書より一部を抜粋しお届けします。

夢には「パターン」がある?

A じつは私、いま夢日記をつけているのですが、その話をすると、「夢と現実の区別がつかなくなってこない? おかしくならない?」と友だちに心配されるんです……(笑)。そんなことってほんとうにあるんでしょうか?

先生 いやいや、通常はそんなことはないわよ。むしろ、自分の夢の法則性、規則性に気づく人が多いのではないかな。

A そう! まさに。実際に夢日記をつけはじめると、「おぼえておこう!」と夢に対して自覚的になる。そうやって日々生きてみると、そのパターンに気づくんですよね。

先生 自分がいまなにを気にしているのか、意識下で完全に処理できていなかったヒトやコトが夢にでてきたりね。

A 基本的に、夢にでてくる人物や光景の大部分は前日とか少しまえにみた人やものなんです。ただたまに、現実世界で会ったことも、みたこともない顔の人が夢にでてくる気がするんですよ。それって、たとえばテレビで瞬間的にみたり、街ですれちがっただけの人の顔が意識下に潜んでいたことになるんですかね……?

先生 あり得るね。いわゆる「サブリミナル記憶」ってやつ。

C 人間ってすごいですね!

先生 初体験の事柄にもかかわらず経験したことのある感覚をおぼえる「デジャブ」もほとんど同じ仕組みじゃないかしら。実際の記憶はなくとも、近しい知覚があったり、経験や知覚がミックスされることでデジャブをおぼえる。脳がイメージの中で予期した知覚と実際の知覚経験が一致したと誤って判断したためと考える研究者もいるの。(注1)

デジャブは無意識的な知覚のサブリミナル。では、よくきく「予知夢」はなにか科学的にいえることがあるかというと、心理学の立場からすると、「認知バイアス(偏り)」に集約されるかなあ……。自分が気になっていることがあって、本来は合ってるときもあれば、合っていないときもあるはずなのに、合ったときだけ「当たった」と認識している状態のことよ。

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