「消防士は火事の予知夢を見る」説の本当の理由 夢にまつわる不思議を心理学の立場から解説

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典型的な例としては、夢におじいさんがでてきた数日後に亡くなったとか、消防士さんがよく、当直の際に火事の夢をみると、実際によく火事がおこるみたいなこと。消防士さんたちは、当然職業柄、私たちよりも日常的に火事の場面をみているわけよね。当直で寝ているときは、いつおこされるかわからないストレスや、よばれたらすぐに現場に駆けつけないといけない緊張感もある。結論、当直の日であろうがなかろうが、火事の夢は日常的にみているはずなのよね。

でも、夢でみているはずなのに、実際に火事にあわないとカウントすらしてない。火事がおこらなかった日は夢をカウントせずに、実際に火事がおこったときにだけ火事の夢をみたことを認識する。消防士に限らず、いわゆる「虫の知らせ」といわれる類の不安がセットとなる出来事の背景には、認知バイアスがはたらいているケースがほとんどでしょうね。

また逆に、夢自体は忘れていたんだけど、実際の出来事によって夢を思い出すこともある。(注2)

夢は全部おぼえているわけじゃないしね。

金縛りの原因は夢?

健康にはよくないと思いつつ、寝るまえに深酒してしまう人がいますよね。飲む量が多くなったときなんかは、早朝に、半分意識がある状態で目ざめる。そうすると、マイルドな金縛りというか、いわゆる「トリップしている感じ」になる。体の半分は眠っているのに、もう半分で意識が覚醒しているような。アルコール度数が強いものを飲むと、入眠は促進されるけど、中途覚醒になってしまうんだよね。

アルコールの摂取はともかく、体は疲れているのに、頭が冴えているときにおこるのが金縛りだね。本来であれば90分間ほど眠ったあとに1回目のレム睡眠がくるんだけど、入眠時からすぐにレム睡眠がきている状態。体が動かないのに意識は鮮明で、うえから押しつけられる感覚がある生理現象だね。不思議なことに、だいたい怖い夢とセットになっているんだよね。

声もでないし、体も動かない。金縛りにあったときには、包丁をもった人が近づいてくる夢などをみる。体を動かせない感覚にひもづいて想起されるイメージから喚起された夢だね。体が動かないことにともなって怖いイメージが再構成される。筋肉が急速に弛緩するから、うえから押しつけられる感覚をおぼえたり、呼吸がしにくくなったり。あとは、風邪とかで発熱したときに、くるくるまわりながら落ちていく感覚におちいるのはよくある共通パターン。

螺旋階段をぐるぐるまわりながらおりていく夢を小さいころからときどきみる人もいる。ご年輩の方で、子どものころ住んでいた家の和室で障子紙が細かく千切れて、くるくる舞っているというのもあった。体のコンディションと結びついた夢の記憶もおもしろいよね。

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