日本人の給料がどうにも上がらない決定的な理由 マクロ要因を除いても様々な慣習が妨げている

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また現実的には、これに付随した問題がある。よくビジネス書やビジネスサイトでは「ジョブ型」への移行が勧められている。これは、個々人の仕事=ジョブを明確化し、それに応じて仕事の遂行内容や成果を規定しようとする試みだ。

この理屈はわかるし、実現したらいいと私は思う。しかし、現場ではなかなか難しい。ジョブ型とは人に値段がつくのではなく、ジョブに値段がつく。だから製造業的な給与の決め方から方針転換が必要だ。ただ、もっと難しいのは社員評価だ。

ジョブ型では、社員の1人ひとりの能力を明らかにするだけではなく、「あなたは、この仕事をこなす能力がありませんから、別の仕事についてもらいます。その仕事の給与はいくらです」と伝えなければならない(もちろん言葉はこれほど直接的ではなかったとしても)。

文化や慣例以外にも給与上昇を妨げる要因がある

また採用の際にも、「あなたはこの能力が欠如しているので、応募の仕事には就けません」と説明せねばならない。逆に、他社員よりも圧倒的に若い応募者がいて、能力を満たしているのであれば、古参社員と給与が同じになるだろう(あくまでジョブに値段がつくからだ)。

これは多くの日本の職場で困難であろうと、私は思う。

あくまで現場の感覚で①~③まで、日本人の給与が伸びない理由を書いてみた。これは日本の全職場にあてはまるわけではないし例外もあるだろう。それに生産性向上の重要性は無視できるものではない。ただ、文化や慣例の側面にも、無視できない給与上昇を妨げる理由があるように私には感じられるのだ。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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