日本人の給料がどうにも上がらない決定的な理由 マクロ要因を除いても様々な慣習が妨げている
なお、日本では解雇をすると会社側が裁判で負けるので解雇しにくい、とよくいわれる。この半分は間違っていて、会社側の責任もある。というのも、多くの会社では、加齢にしたがって給与をあげている。22歳の時のまま給与が変わらずに、50代になった人はおそらくいないだろう。会社は加齢とともに社員の給与を上げ、能力が向上したとみなしていることになる。だから会社が社員を能力不足だからと解雇しようとすると、裁判所からすると自己矛盾のように見えるのだ。
ただし、これは①で挙げた製造業中心史観から見ると仕方がない。会社側は、社員が加齢とともに職場や業務全体に詳しくなって仕事ができるようになると考えている。その前提である以上は、経験年数とともに社員の給与を上げる制度にするのは仕方がないともいえる。
クビにならない、クビにしない、という流動性の低い状態のため、代わりに給与の水準は下がる。逆にいえば、社員は安定性と給与の低さゆえに、安定した雇用を獲得している。
一度上げてしまったらなかなか下げにくい
そして①②に続いて、給与の上方硬直性がある。どのような仕事をしていても、成果をあげたら、その分を給与に反映すればいいと普通は思う。実際にフリーランスならば働いた成果分だけ収入になる。
しかし、会社員はあくまで会社で働いた年数をベースに給与が決まる(①)。もし、成果に連動しても給与を上げてしまうと、実際の問題としては、その後に、なかなか下げることができない。30万円の月給だった社員を、優秀な成績だからとして40万円に上げるとする。その後、芳しくない成績になったとして、30万円に戻すかというと、なかなか下げられない。
少なくとも経営者も労働者側も下げることに逡巡する。かといって解雇するのも難しい(②)。そこで選ばれる選択肢は、「急激には給与を上げないし、下げもしない」となる。
これを、上がる方向には進まない意味での、上方硬直性という。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら