「オンライン授業の高すぎた壁」現場の悲痛な叫び コロナ禍で露呈「GIGAスクール構想」が不安な訳
こうした状況下で進められているのが、文部科学省のGIGAスクール構想だ。GIGAとは「Global and Innovation Gateway for All」の頭文字で、すべての人に世界的規模で革新的な入口を、という意味。具体的には義務教育を受ける児童生徒(小中学生)に対し、ひとり一台の学習用デジタル端末(パソコンやタブレット)を配布、学校内の高速ネットワーク環境(Wi-Fiなど)を整備する。
子どもや教師が使用する学習教材は、電子黒板やデジタル教科書、クラウド型のアプリ。さらに、小学校でのプログラミング教育が必修化される新学習指導要領の実施など、教育のICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)化を目指すといった内容だ。
計画の一部はコロナ禍の休校措置で前倒しされ、公立の小中学校を設置する全国の自治体では、2021年3月時点で97.6%が子ども専用のデジタル端末とネットワーク環境の整備を終えた。さらに2024年度には、従来の紙の教科書と併用しつつデジタル教科書の導入を進めるという。今後の教育現場ではデジタル教材の活用や、いわゆるオンライン学習を十分に行えるだけの指導力が求められる。
「オンライン授業はハードルが高すぎた」
オンライン学習はコロナ禍において一躍注目を集めた。2020年3月から小中高校などで全国一斉休校が実施され、一部地域では5月末までの長期にわたって子どもの通学が中断。進級や進学という重要な時期と重なったため、不安を抱えた人も多いはずだ。
学校での授業ができないという緊急事態で、オンライン学習はどれほど実施されたのか。2020年7月に公表された文部科学省の『新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた公立学校における学習指導等に関する状況について』によると、Zoomなどのリモート会議システムを使った「同時双方向型オンライン指導」を行った教育委員会は全国で15%。ちなみに4月時点では、わずか5%にすぎなかった。
東海地方の公立中学校に勤務する教師(40歳)は、「ICT教育のモデル校ならともかく、ふつうの公立校でオンライン授業をするのはハードルが高すぎた」と話す。
通常の授業をオンラインで代替するには、設備というハード面と実際にオンライン授業を行える人材の確保というソフト面の両方が必要だ。学校では授業用の動画を配信するためにカメラやマイクを準備したり、教師用のパソコンを設定したり、セキュリティー対策などを行わなければならない。さらにオンライン授業をどう進め、どんな教材を使っていくのかという問題もあった。
通常の授業のように板書をしながら行うのか、パワーポイントのようなプレゼンテーションソフトを使うのか、リアルタイムか録画か、どのくらいの授業時間にするのかなどを検討し、おまけに上層部の決裁がなければ進められない。先の教師は「ウチの学校には、具体的な知識を持っている先生は誰もいなかった」と嘆息する。
「教科の中には、オンライン授業に適さないものがあります。たとえば理科なら実験器材を使えないし、体育では用具の使用だけでなく集団競技や対抗戦もできません。美術や音楽、家庭科など実技系の授業も、用具や設備を考えれば現実的にむずかしい。休校中は保護者からなぜオンライン授業をやらないのか、先生がダメだと苦情が寄せられましたが、学校にもいろいろな事情があるんです」
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