米Appleを衰退させる「残念な企業文化」の中身 「デザイン至上主義」「トップダウン」はもう限界
ティム・クックのアップルでは、創意工夫にあふれ、誰もがアイデアを出し合い、コラボレーションで仕事を進めるという「エンジニア思考」はまったく見られない(クック自身はエンジニアだけれども)。民主的な革新はほとんど推奨されず、人間もアイデアもヒエラルキーに制約されていて、コラボレーションは秘密主義に妨げられている。
その結果は予想どおりで、アップルはトップから与えられた単純なアイデアを磨きあげていくのは大得意だが、会社全体から集めたアイデアをもとに、新しく創造性にあふれた製品をつくることには苦労している。
果たしてアップルは急速に変化するビジネスの世界で、企業文化全体を変えずにこのままやっていけるだろうか?
アップルの改良者的な発想の限界
ジョブズが生きていたころは、アイデアを思いつくのは彼で、社内のほかの人々の仕事はそれを改良することだった。
アップルの文化は実務優先型、すなわちトップから与えられたアイデアを洗練させるようにできていた(そして、いまでも変わっていない)。
アップルはいまだに、ジョブズが亡くなる前に考え出した2つの看板商品、つまりアイフォーンとマックを改良しつづけている。
アイフォーンとマックはさらに薄く、高速になった。アップルウォッチ(アイフォーンを持っている人向けの時計)やエアポッド(アイフォーンを持っている人向けのイヤホン)といったウェアラブルデバイスで、さらに便利になった。顔認証やアップルペイといった便利な機能で、アイフォーンの使い心地はさらによくなった。アップルほど既存の資産を活用している会社はない。
しかし、これらのデバイスを超える創造については別の話だ。ホームポッドや自動運転車の自社製造など、野心的な新製品をつくろうというアップルの賭けは失敗しつづけている。
そしてその原因は、ジョブズ時代の遺産であるアップルの改良の文化なのだ。
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