米Appleを衰退させる「残念な企業文化」の中身 「デザイン至上主義」「トップダウン」はもう限界
現在はジョブズに代わって6名の経営陣がアップルを経営し、彼らがアイデアを出して社員たちが実務を行っている。
アップルでは、デザイナーがこの役員たちの注文を実現する第一線の従業員である。アマゾンやフェイスブック、グーグルではエンジニアが君臨しているが、アップルではデザイナーが神なのだ。
ほとんどの企業では、デザイナーは中身のできているものの外見を整えるのが仕事だ。だがアップルでは、デザイナーが製品の見かけや使い心地を決定してから、エンジニアや製品マネジャーがそれを実現する役回りである。
それが技術的にどんなに難しくてもおかまいなしだ。
アップルの製品開発プロセスにおけるデザイン重視主義は、同社が主力デバイスを改良しつづける原動力となっている。
デザイナーを軸にしてトップに権力を集中させることで、アップル経営陣は同社の一般社員から距離をおいている。社員の仕事はアイデアを出すことではなく、実務ワークに専念することのため、経営陣と交流する機会はほとんどない。
アマゾンやフェイスブック、グーグルの社員たちは毎日のようにCEOと交流があるが、アップル社員とティム・クックはめったに交流しない。
ザッカーバーグやピチャイが社内に対して経営陣との質疑応答のミーティングを開き、ベゾスが6ページ文書で交流をはかっているのに比べ、アップルにはアイデアを経営陣に届ける手段がほとんどない。
数年前のビジネスを取り巻く環境、すなわち実務ワークという重荷が社員のアイデアを生み出す能力を妨げていたころなら、ジョブズの後任としてクックが当然の人選である理由が理解できただろう。
しかし、現在のビジネスの世界は変わった。そして、アップルはいずれにしろ適応せざるをえないだろう。社員のアイデアを利用できない経営者ではなく、利用できる経営者が成功する時代が来る。
デザイン至上主義の弊害
2010年代の半ば、アップルは自社製の全自動運転車への挑戦を始めた。プロジェクト・タイタンというコード名のもと、アップルはこの自動車の開発に大きな人員を割り当てた。
それが、同社の次の「革新的」製品になると信じたからだ。しかしクックが発表のスピーチをするまでには、まだ当分時間がかかりそうな気配である。
このプロジェクトはホームポッドを苦しめたのと同じ、数々の障害によって開発が難航した。
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