甲子園常連校が「休み」を重視する単純明快な理由 日大三高・野球部監督が説く今どきの子の指導

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「がんばる」とはどういうことか、みなさんは説明できるでしょうか?

ある人は、「どんな苦労もいとわず努力し続けること」と言うかもしれませんし、またある人は、「根性を見せること」「あきらめない心を持つこと」だと言うかもしれません。

今の大人たちの多くは、「私たちの時代と比べて、若い人たちはがんばりが足りない」と口にしているようですが、はたしてそうでしょうか? 

今どきの高校生を指導している私は、「そんなことはありませんよ」と断言できます。

たしかに今の子どもたちは、私たちの時代と比べて親御さんから大切に育てられてきています。その分、精神的にきつい思いをするような体験を積んできていないのも、また事実です。しかし、それは今の若い人たちは、「がんばることはどういうことなのか」が理解できていないだけの話にすぎないのです。

そこで彼らに、「がんばるというのは、こういうことなんだよ」ときちんと教えてあげることによって、どんなに困難な状況が訪れようとも、それを乗り越えようと努力する姿勢を、私はこれまで幾度となく見てきました。

朝から夜まで野球漬けの「地獄の冬合宿」

それを象徴するのが、前述した日大三高名物の冬の合宿、通称「地獄の冬合宿」です。三高では毎年12月の期末試験が終了した翌日から2週間、早朝から夜遅くまで練習することにしています。

1日のスケジュールは、ざっと次のとおりです。

朝5時に起床し、5時半に合宿所の食堂に集合してみそ汁を飲みます。これは塩分とタンパク質を摂取することで、運動するのに適した体にするのが狙いです。

それから12分間走を行って、さらに16種類のサーキット・トレーニングと続きます。それから朝食をとり、午前中は通常の練習時をはるかに超えた時間をバッティング練習に割きます。このとき、1球1球「鋭く振る」という意識を徹底させ、スイングスピードの向上をはかります。

お昼を挟んで午後は守備練習を夕方まで行い、夕食をとってから1時間ほど素振りをしてからお風呂に入って、21時には消灯となります。

まさに、朝から夜まで野球漬けの2週間を送るわけですから、「無事2週間を終えることができるだろうか?」と不安に思う選手も実際にいます。選手たちは、毎日その日に取り組んだことをノートに記しているのですが、そこで私はこう言って、選手に心情を吐露させています。

「不安な気持ちを隠すことなんてしなくていいから、今のありのままの思いを、ノートに書き留めておきなさい」

合宿直前、そして合宿が始まった当初はネガティブな言葉ばかり書いているのですが、私はこれでオーケーだと思っています。たとえば次のようなものです。

「明日はどうなるんだろう?」

「1日が長いなあ」

「早く終わってほしい」

無理に不安な気持ちをため込むよりも、「大丈夫だろうか?」という不安な気持ちを吐き出すことでストレスを軽減できますし、選手の心理状態が私にもつかめるからです。

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