甲子園常連校が「休み」を重視する単純明快な理由 日大三高・野球部監督が説く今どきの子の指導

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  小倉全由監督(写真:上野裕二、『「一生懸命」の教え方』より)

そこで私は、「今日、オレのノックを50本捕ったら、明日は休みにしてやるぞ」という提案をします。すると、選手の目の色は間違いなく変わります。明らかに「明日は休みだからがんばろう」というオーラを漂わせ、気持ちのこもった実のある練習へとつながっていくことが多いのです。

このような話を、ほかの高校の監督にすると、「そんなに選手に休みを与えて、不安にならないんですか?」などと聞かれることがありますが、私はそうは思いません。休みがあることで、それを糧にして練習にいっそう打ち込むことができる。休むことによってリフレッシュできて、それが翌日からの活力になる。

グラウンドを離れれば1人の高校生

この2つのメリットがあるのがわかっているからこそ、私は選手に休みを与えているのです。彼らもグラウンドを離れれば、1人の高校生です。普段は野球に真剣に打ち込む一方、普通の高校生と同じように遊びたいときもあると考えていても、不思議なことではありません。

ファーストフード店やカラオケ店で楽しんだり、映画を観に行ったり、ディズニーランドで満喫した気分を味わう。そうしたことで気持ちを切り替え、再び野球に真摯に打ち込むことができるのであれば、それは大きなプラスになると思っているのです。

毎年12月に行う三高恒例の強化合宿にしたってそうです。2週間の長丁場で、まだ陽の昇らない早朝から夜遅くまで必死になってボールを追いかけたり、バットを振り込んだりしています。選手も内心は「きついなあ」「逃げたいなあ」などと思っているかもしれません。

でもそんなときに、「この合宿が終わったら、みんな年が明けて学校が始まるまで休んでいいからな」と言ってあげると、俄然やる気を見せるようになるのです。

もちろん私は宣言どおりに、強化合宿が終わったら長い休みを与えます。年末年始は家族や友人たちと過ごし、束の間の長期休暇を楽しんで英気を養ってほしいと考えているからです。

このように、目の前の休みを励みにがんばらせながら、冬、春を過ごし、来る最後の夏に向けて着実に階段を上らせていきます。大きな目標を達成させるために、小さな目標を作って1つひとつクリアさせていくことで、実力をつけていくというやり方は、選手のモチベーションをアップさせるという面においても非常に効果的なのです。

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