甲子園常連校が「休み」を重視する単純明快な理由 日大三高・野球部監督が説く今どきの子の指導

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このとき私は、選手たちにこんな話をします。

「不安な気持ちもあるだろうし、『やっと今日が終わった』と思う気持ちだってあるだろう。でもそれでいいんだよ。今日1日を全力を出し切って練習して、『また明日やってやる』という気持ちを、徐々に持ってくれたらそれでいいんだ」

こうして1日、また1日と過ごし、合宿の最終日が近くなると、選手たちのノートはこのようなポジティブな言葉に変わっていくのです。

「あと2日で終わるけど、絶対にゴールしてみせるぞ!」

「明日で合宿が終わるけど、笑顔で終わってみせる!」

厳しさだけ押しつけるのは指導者の自己満足

このとき、私が選手たちに配慮していたのは、「ケガをさせない、あるいはケガしているのに無理をさせてまで練習させないこと」です。やみくもに厳しさだけを押しつけるのは、単に指導者の自己満足であり、選手にしてみたら何ひとつプラスにならないので、その点の見極めだけはきちんと行うように心がけているのです。

そうして迎えた合宿最終日の朝、この日は5時半から2時間近く、グラウンドでインターバルのダッシュを繰り返して終えるのですが、終わった瞬間、選手たちは達成感を味わいながら、全員で抱き合って泣くのです。毎年この合宿を行っていて、どんなに時代が流れてもこの光景だけは変わることがありません。

『「一生懸命」の教え方』(日本実業出版社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

合宿が終わった直後、私はグラウンドに選手を集めて、最後に選手全員にこんな話をしています。

「いいか、『がんばる』っていうのは、こういうことを言うんだ。2週間、全力で練習に取り組み、『一生懸命』を積み重ねていく。みんなは貴重な経験をしたんだ。胸を張っていいんだぞ」

彼らは全員、この合宿を通じて「がんばるとは、どういうことなのか」を理解することができたのです。その姿を見て、「今の若い人たちは、がんばりが足りない」などとは、私には絶対に口に出して言えません。むしろ、一生懸命がんばっているのは私たちの時代よりも上かもしれないのです。

だとしたら、「若い人たちが、がんばることを知らないのであれば、大人たちがきちんと教えてあげること」が大事なのではないか――。私はそう考えているのです。

小倉 全由 日本大学第三高等学校教諭、同校硬式野球部監督

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おぐら まさよし / Masayoshi Ogura

1957年千葉県生まれ。自身が日大三高在学時は内野手の控えとして甲子園を目指すも、3年生最後の夏は西東京予選で敗退。日大進学後、日大三高のコーチに就任し、1979年夏の選手権大会への出場。1981年に関東第一高等学校硬式野球部監督に就任。1985年夏の選手権大会で初出場を果たしベスト8、1987年春のセンバツでは準優勝に導く。1988年に監督を辞任するも、1992年12月に同校硬式野球部監督に復帰し、1994年夏に9年ぶりの甲子園出場に導く。1997年日大三高に移って硬式野球部監督に就任。2001年夏の選手権大会で、同校初となる夏の全国制覇を達成。2010年春のセンバツでは準優勝、2011年夏の選手権大会では、夏の全国制覇を達成した。

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