甲子園常連校が「休み」を重視する単純明快な理由 日大三高・野球部監督が説く今どきの子の指導
このとき私は、選手たちにこんな話をします。
「不安な気持ちもあるだろうし、『やっと今日が終わった』と思う気持ちだってあるだろう。でもそれでいいんだよ。今日1日を全力を出し切って練習して、『また明日やってやる』という気持ちを、徐々に持ってくれたらそれでいいんだ」
こうして1日、また1日と過ごし、合宿の最終日が近くなると、選手たちのノートはこのようなポジティブな言葉に変わっていくのです。
「あと2日で終わるけど、絶対にゴールしてみせるぞ!」
「明日で合宿が終わるけど、笑顔で終わってみせる!」
厳しさだけ押しつけるのは指導者の自己満足
このとき、私が選手たちに配慮していたのは、「ケガをさせない、あるいはケガしているのに無理をさせてまで練習させないこと」です。やみくもに厳しさだけを押しつけるのは、単に指導者の自己満足であり、選手にしてみたら何ひとつプラスにならないので、その点の見極めだけはきちんと行うように心がけているのです。
そうして迎えた合宿最終日の朝、この日は5時半から2時間近く、グラウンドでインターバルのダッシュを繰り返して終えるのですが、終わった瞬間、選手たちは達成感を味わいながら、全員で抱き合って泣くのです。毎年この合宿を行っていて、どんなに時代が流れてもこの光景だけは変わることがありません。
合宿が終わった直後、私はグラウンドに選手を集めて、最後に選手全員にこんな話をしています。
「いいか、『がんばる』っていうのは、こういうことを言うんだ。2週間、全力で練習に取り組み、『一生懸命』を積み重ねていく。みんなは貴重な経験をしたんだ。胸を張っていいんだぞ」
彼らは全員、この合宿を通じて「がんばるとは、どういうことなのか」を理解することができたのです。その姿を見て、「今の若い人たちは、がんばりが足りない」などとは、私には絶対に口に出して言えません。むしろ、一生懸命がんばっているのは私たちの時代よりも上かもしれないのです。
だとしたら、「若い人たちが、がんばることを知らないのであれば、大人たちがきちんと教えてあげること」が大事なのではないか――。私はそう考えているのです。
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