あなたが「高校数学」であっけなく脱落した根因 量も多く質も高い、「感覚的に中学の5倍」の重さ

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K:解法を暗記する?

石原:そう、解法を暗記する。わからないけれど解法を暗記している場合、数字が変化した問題しか対処できません。言い回しが変わったときに、「結局、何を聞かれているのだろう?」という「問題の背景」を理解しようとせず、中学までの取り組み方のまま条件反射的に取り組もうとしてしまうためです。

K:「問題の背景」というと、どういうことなんですか?

石原:「この問題って、こういうことを習ったけれど、それはわかっているかな?」とか、「こういう意味でとらえられているかな?」ということを確認するのを「背景」といって伝えています。予備校での講義やZ会での添削の際、私は「この問題は何がいいたいんだろう?」ということをつねに意識していたために「背景」という言葉を使うようになりました。

K:「問題の背景」なんて考えていなかったです。これももっと早く教えてほしかったです。

教える側も問題の「背景」を伝える

石原:「問題の背景」とは、いわば「この問題は、こういうことを聞きたいから、こういう出し方をしている」というようなことですね。「問題が出される背景」までを考える習慣がない生徒は、高校数学を解くのは厳しいと思います。

「問題の背景」を理解すると、だんだん生徒も「この問題は、そういうことを聞いているのか!」とか、「この問題は、こんなふうに聞かれてそうだな」とか、「そういうところがキモなんだな!」とつかめてくるようになります。 そうすると、新しい問題でも自分で解くための切り口を見つけられるようになる。問題の見方が変わってきます

K:「問題の見方」が変わる?

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石原:「式(抽象性が高い)」と「グラフの図示(具体性)」との関わりや、問題のとらえ方の引き出しが増えてくるため、浅い理解から深い理解に変化していくような感じです。

その結果、問題文の中にヒントがちりばめられているというのも見えてくる。 教える側からも問題の「背景」を伝えてあげることで、生徒が問題を見たときに、理解を深めつつ「きっと、こういうことを聞いてるんじゃないだろうか」という勘が鋭くなってきます。

K:「問題の背景」がわかれば、超天才でなくても高校数学を解けるということですね。

石原:そうですね。そうやって「問題の背景」をつかんで解く練習を繰り返す。「そういうことなんだ!」とわかったら、そこから1人でどんどん取り組めるようになると思います。それまでは教える側も「ここに書かれていることは、こういうことをいっているよ」ということを意識して伝えてあげることが大事かなと思います。

石原 泉 公文国際学園数学講師、Z会進学教室数学講師

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いしはら いずみ / Izumi Ishihara

1964年北海道生まれ。岐阜県公立中学校教諭を経て、難関大に強いZ会の東大・京大理系コースの添削者となる。Z会での15年間にわたる添削者としての経験で培った、生徒の立場になって問題を「翻訳」する正答へのアプローチ、より具体的な例を用いてかみ砕いた解説に定評がある。また、大学受験のバイブル「赤本」の執筆者として5年間携わる。自分の子どもたちにも独自の理論を教えた結果、高校数学を楽に乗り切ることに成功し、長男は2009年京都大学工学部、次男は2013年東北大学工学部に進学。学校、予備校、Z会の添削等で指導した生徒はのべ3万人を超え、旧帝大をはじめ国立大、医歯薬系大学にも多数合格実績を持つ。

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