元不登校の五輪選手が感謝する親の勇気ある対応 学校に行きたくない子とどう向き合うべきか
不登校になる要因はいろいろだが、本人でも気づかないうちに心身の限界を超えてしまうケースもある。
大阪府の大学生・長尾樹(いつき)さん(19)は、中学2年のときに不登校になった。何でも頑張る優等生タイプで、責任感も強かった。ある朝、学校に行く気はあるのにベッドから起き上がれなくなった。
「キャパオーバーだったと思います。身体が動かなくて、無気力状態になった。自分の将来は真っ暗、みたいな。人の目も怖かった」
シングルマザーの母は不登校を否定しなかったが、どこか本心が見えず心の距離を感じていた。
高校には進学したいと私学を受験し合格、入学するも精神的にも体力的にもきつく、結局1カ月で行けなくなった。
そのころ、ふとした原因で母とけんかになった。反抗的な態度をとった長尾さんの頬に、母のビンタが飛んできた。母が感情的になる姿を見るのは初めてだった。
「それまで親子げんかもしたことがなかった。初めてけんかして、母もずっと悩んでいたことを知りました。母が僕のことを思ってくれる気持ちが伝わって、僕も自分のことを受け入れることができた。将来にも目が向けられるようになり、トンネルの先に光が見えた気がしました」
いろんな道があってもいいと思う
その後、全日制から転学した通信制高校は長尾さんに合っていた。
「いろいろなチャレンジをさせてもらえる学校だった。そこで完全に不登校から抜け出せました」
長尾さんは、いろいろな選択肢や、いろいろな道を進む人がいることを知ったことでも「道が開けた」と話す。
「学校に行くという選択肢と同様に、行かない選択肢があってもいいと思う。もともと、人間としてはみんな違うんだから、いろんな道があってもいいよね、と言いたい」
前出の南條さんは、不登校だった経験を活かしたいと、独学でカウンセラーの資格を取得。「当時、同じ境遇の人と接する機会もなかった。自分たちが欲しかったことを形にしたい」「不登校の子の居場所づくりや、現状から一歩踏み出すきっかけをつくれるような活動をしたい」との思いから、同じく大阪在住の長尾さんらとともに不登校支援グループ(『からっぽ』)を立ち上げた。
現在、メンバーは全国から集まった10代~20代の5人。いずれも不登校を経験している。
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