10年間を徹底分析!中国「不動産危機」の背景事情 住宅価格が下がる世界が想像つかなかった人々
話を冒頭に戻そう。2012年、筆者の講義で『バブルへGo』を見た学生のうち、「中国は今、バブルにあると思う」と答えたのは半分ほどだった。「バブルは崩壊するか」という質問については、「政府が何とかしてくれる」という回答が半分以上を占めた。
それから数年経つと、中国の大学生は「住宅価格が下がる」世界を全く想像できなくなった。
2018年に元教え子の中国人が複数人来日した際に、新宿区にある筆者の母校を案内した。不動産屋に貼られた賃貸物件案内を見て、筆者が「(自分が学生だった)20年前と家賃が同じだ」とつぶやくと、そのうちの1人が後から「20年も家賃が変わらない世界が現実にあることが、日本旅行でいちばん驚いた」と話してくれた。
政府が何とかしてくれるという期待感
恒大が崖っぷちに立たされている今、「政府が何とかしてくれる」という期待はなお根強い。
とは言え、2015年から5年間で、中国人長者番付でトップを取った3人のうち、2人はすでに厳しい環境にいるのも現実だ。
中国人として初めて世界長者番付トップ20にも入った万達の王氏は、6年足らずで約320億ドル(約3兆5000億円)の個人資産を失い、今は中国人長者番付の上位30人にも入っていない。これだけ急激に転落した資産家はほかにいないが、2016年に経営危機に見舞われたからこそ、恒大のようにはならなかったという意味では幸運なのかもしれない。
なおフォーブス中国人長者番付で2018、2019年のトップだったジャック・マー氏は、当局との関係悪化以降、1年近く表舞台から遠ざかっている。
この1年の中国当局の規制の苛烈さは、現地エコノミストや専門家の想像を大きく超えた。20年以上にわたって繰り広げられてきた「壮大なババ抜き」は、本来はもっと早く決着をつけておくものだったのだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら