10年間を徹底分析!中国「不動産危機」の背景事情 住宅価格が下がる世界が想像つかなかった人々

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一方でこの時期、不動産企業トップは再び市場の減速という課題を意識し始めた。都市部の住宅価格の高騰で実需層の手が届かなくなり、中国政府は2016年に不動産取得規制の厳格化に転じたからだ。

万科のトップである郁亮董事会主席は2017年に、決算発表の場で「中国の不動産業界は(黄金時代を終え)白銀時代を迎えている」と発言し、管理サービスや高級マンションなど、採算性を重視した経営にシフトしていった。

そんななかで恒大は2018年にEVなど新エネルギー車の開発への参入を打ち出した。2019年には3年間で7000億円を投じる計画をぶち上げ、医療・介護機関の運営を手掛ける傘下の「恒大健康」を通じて、自動車生産に必要な事業を“爆買い”した。

2020年8月に、EV6車種を2021年に発売すると発表し、許氏自らテスト車両に試乗して「2025年までに(恒大ブランドEV車の)年間販売100万台、2035年までに500万台体制を目指す」と宣言した。

このように中国の不動産業界は長らく、お金をどこかから借りては湯水のように何かに注ぎ込む経営を続けてきた。

日本人との感覚の違いも

筆者の知人で、2010年代前半にスーパーリーグのコーチをしていた外国人は、度々給料の遅配を愚痴っていた。

「親会社が不動産会社だから。今月はキャッシュが入らないから、来月まで待ってと言われるんだよ。日本や欧米ではありえないし、皆怒っているけど、給料を人質にされているから帰国もできない」

2010年前後に「家を買ったら、値上がりするよ」と勧められた日本人のほとんどは、「ババ」をつかむのを恐れて手を出さなかった。だが、異常なバブルはその後10年間続き、皆、笑いながら「買っていたら数倍になっていたなあ」と振り返る。

住宅もそうだが、デベロッパーが発行する社債もそうだ。バブル崩壊の痛みを知る日本人にとっては、いつか終わりが来るかもしれぬ「投機」だったが、実は中国人はそうではない。

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