10年間を徹底分析!中国「不動産危機」の背景事情 住宅価格が下がる世界が想像つかなかった人々

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成長鈍化に直面した不動産企業は、ブランディングや多角化、海外進出に目を向けるようになる。その1つがサッカーだ。中国国民からの人気が高く、習近平国家主席もサッカー好きとして知られている。ところが中国のサッカーチームは日本や韓国よりも弱く、知名度を上げたい建設・不動産企業の恰好の投資先となった。

恒大は2010年に広州恒大(現・広州足球倶楽部)とスポンサー契約をした。同チームは海外有名選手の「爆買い」で戦力を高め、2011年から中国スーパーリーグで7連覇、2013年、2015年にアジア一を決めるAFCチャンピオンズリーグで優勝した。

2012年から2015年にかけて、元日本代表監督の岡田武史氏、フィリップ・トルシエ氏や、元韓国代表の洪明甫氏を監督に招聘した杭州緑城(現・浙江緑城)のオーナー企業・緑城集団も、大手不動産デベロッパーだ。

2010年代前半は、中国プロリーグ1部「スーパーリーグ」に所属するチームの7割は、建設・不動産企業がオーナーだった。

長者番付は3年連続で不動産創業者が首位

また、デベロッパーの中には、ニューヨークなど欧米で、中国人富裕層向けの住宅開発に乗り出したり、あるいはアジアでの都市開発に触手を伸ばす企業も出てきた。

2014年に不動産購入規制が緩和されると、国内販売の回復と大胆なM&Aの両輪によって、デベロッパーは一気に膨張した。

恒大の債務危機で、許氏が2017年にフォーブスの中国人長者番付トップに立ったことは多くの人が知るところだが、2015、2016年にトップだった王健林氏も、不動産企業である大連万達集団(以下:万達)の創業者だ。

万達は2012年にアメリカの映画館チェーン大手、AMCエンターテインメント・ホールディングスを26億ドル(約2900億円)で買収して、世界の注目を集めた。2014年にはグループの不動産企業と中国最大の映画館チェーンが上場し、王氏は1年間でアイスランドのGDP(国内総生産)を上回る個人資産を増やした。

王氏は欧米のエンタメ、特にハリウッド資産の爆買いで、中国の資金力を印象づけた。上海ディズニーランドの開業前には、それに対抗して中国中にテーマパークを建設した。スポーツビジネスにも関心が高く、スペインのサッカークラブ、アトレティコ・マドリードの株式を2015年に20%取得したほか、「アイアンマン」ブランドを持つトライアスロン競技主催企業を6億5000万ドル(約720億円)で買収した。

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