10年間を徹底分析!中国「不動産危機」の背景事情

住宅価格が下がる世界が想像つかなかった人々

世界から注目を集める、不動産大手「恒大集団」の動向(写真:アフロ)

2012年秋、中国・大連市の大学で「日本経済」の講義を担当していた筆者は、100人超の大学3年生に阿部寛と広末涼子主演の映画『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』を見せた。

氷河期世代の筆者は2010年に中国に渡り、初めて「バブル」の空気を体感した。男性も女性も会社員も教師も株と不動産の話ばかりしているなか、不動産バブル抑制に向け、同年に北京で初めて不動産購入規制が導入された。2000年代から2010年代初めに中国に住んでいた日本人の中には、「金持っているのだから中国で家を買いなよ。値上がりするから」と一度は勧められた人もいるだろう。

20歳前後の若者が経済の現状をどう認識しているか知りたくて、前述の講義では日本のバブルを描いた映画を見せ、「中国は今バブルか」「今後中国経済はどうなるか」をレポートにまとめてもらった。学生たちの驚きの見解を紹介する前に、それから10年の不動産業界の動きを、今世界中で注目されている恒大集団(以下:恒大)を中心に振り返りたい。

2000年代は不動産市場の黄金期

農村出身で、鉄鋼技術者だった許家印氏が恒大を創業したのは1996年。アリババの設立者で、ジャック・マー氏が政府職員としてアメリカ出張中にインターネットを知ったのも、2020年に中国一の富豪になった鍾睒睒氏が、ミネラルウォーターメーカーの「農夫山泉」を設立したのも、この年のことだ。それだけで、時代が見えるだろう。物も情報もない代わりに、可能性は無限。持たざるものがこぞって起業した。

中国経済と中国人の所得が急成長した2000年代は、自動車と不動産市場の黄金時代だった。特に不動産は一本調子で価格が上がり、実需だけでなく「価値の上昇を約束された」投資商品として考えられていた。低価格の集合住宅を供給していた恒大は、順調に成長し、2009年に香港証券取引所に上場した。

北京で中国初の住宅購入規制が導入されたのはその翌年だ。2011年には他の都市でも2軒目の住宅取得に対して厳しい制限を設けたり、頭金の積み増しを求める規制が導入され、不動産市場はいったん冷え込んだ。

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