10年間を徹底分析!中国「不動産危機」の背景事情 住宅価格が下がる世界が想像つかなかった人々

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ただし、万達の栄華は2017年に突然終わった。外貨流出を懸念した中国政府が金融機関に万達への融資の制限を通達した。有利子負債が2000億元(約3兆4000億円)に膨らんでいた同社は、生存のために数年間で買いまくった資産の大半を売却せざるをなくなったからだ。

王氏は当時、国内のホテル76棟と13のテーマパークの引き受け先について、同業大手である融創中国のトップの孫宏斌氏に相談した。

孫氏は「全部買い取るから、恒大には相談するな」と即答したと言われる。さらには、2人はその後のやり取りで、中国のメッセージアプリWeChatも使わなかったとされている。テンセントのCEOである馬化騰(ポニー・マー)氏に、この情報が漏れることを危惧したためだ。

戦国武将の戦を彷彿とさせる出来事も

結果、万達は2017年秋、ホテルとテーマパークを日本円にして約1兆円で融創と同業大手の富力地産に売却した。融創は同年前半だけで有利子負債残高が1兆円増えていたが、M&Aによる拡大路線を緩めなかった。

「恒大に取られるくらいなら」という気持ちもあったかもしれない。その融創も最近、地方政府に助けを求めたと報道され、文書を送ったことが明らかになり、ホテルを買い取った富力は恒大より深刻な状況に陥っている。

このころの不動産企業では、戦国武将の戦を彷彿とさせるような出来事が他にもある。例えば、業界トップだった万科企業(広東省)は、2015年に無名の投資会社に敵対的買収を仕掛けられた。万科の経営が混乱に陥った際には、恒大がその隙をついて、万科の株式を大量取得している。

万達、万科と業界を代表するライバルがゴタゴタしている間に、恒大は大きく販売を伸ばし、2016年の中国の不動産販売で前年比85%増の3733億元(約6兆3000億円)を売り上げて、初めて首位に立った。許氏は翌年のフォーブス中国人長者番付で1位になり、たたき上げのカリスマ経営者として一躍時の人となった。

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