政令市でも若者の流出が続く「静岡と浜松」の苦悩 静岡市は婚活支援や新幹線通学支援も行うが…
もうひとつ、静岡市の調査結果を紹介しよう。2015年度の市民アンケートで、市外への進学を予定している高校生に「今後、静岡市へ戻ってくることについて、どう考えていますか」と尋ねた結果、「必ず戻ってくる」16.1%、「いつか戻ってくる」23.6%と、高校生段階では約4割がUターンの意向を示した。「分からない」が35.2%で最多、「戻ってこない」は7.1%だった。
浜松市も見てみよう。同市は先ほどの総合戦略の中で、市民アンケートで「満足のいく雇用機会に恵まれていると思う人の割合」を2024年に30.0%にすることを目標としている。しかし、これまでの結果は2015年の28.0%が最高で、2017年には最低の18.4%に低下した。
浜松市民も、少なからず雇用への不安を抱えていると言えそうだ。
婚活支援や新幹線通学支援も
人口減、若者流出を食い止めるために、静岡市は各種調査、移住促進政策をはじめ、さまざまな対策を講じてきた。主だった例を2つ取り上げよう。
市が実施している結婚支援事業で、2014年度から行っている。市は取り組みの理由について<少子化の流れに歯止めをかけるためには、従来の施策と併せて、これまで、行政が踏み込みにくいと考えられていた個人の領域である「結婚」という分野にあえて踏み込み、結婚したいけれども出会いの場がない、という若者への積極的な支援が必要と考えています>と記している(静岡市のHP)。
コロナ禍の2020年度は例年よりも実施回数が少なく、出会いのイベントは6回だけだった。「陶芸DE婚活」「お茶染めDE婚活」「図書館で婚活」などで、参加者は全部で88人(男性47人、女性41人)。成立したカップルは21組だった。参加者の半数近いから、まずまずの成果か。
とはいえ、2014年度からの7年間トータルで見ると、成立したカップルは全部で400組以上になるが、これまでに結婚・婚約したカップルはわずか20組にとどまっている。年平均で3組。少子化対策、人口減対策としては厳しい結果だ。
静岡市内の自宅から県外の大学等へ通学する30歳未満の学生を対象に、新幹線通学定期代の一部を無利子で貸与する制度で、2016年度から実施している。卒業後、返還期間に相当する期間、市内に居住し、市民税を完納すれば返還が免除される。
2016年度の申請者数は延べ178人(男性63人、女性115人)、2017年度(5月31日時点)は申請者延べ239人(男性90人 女性149人)だった。このうち、2017年3月の卒業生25人のうち7割超の18人が地元に就職した。通常の県外大学進学者のUターン就職率は4割なので、効果が実証された形だ。
あの手この手で若者引き留め策を講じているが、全体状況を見る限り、まだまだといったところだ。
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