政令市でも若者の流出が続く「静岡と浜松」の苦悩 静岡市は婚活支援や新幹線通学支援も行うが…

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こうした中、今年も報じられた「静岡市人口減」のニュースに寄せられたネット上の声は厳しいものが目立つ。

「良いのは気候だけ。子育てには向かない。公園に無料駐車場があるところは少なく、雨天で遊べるところがない」
「転勤してきて思うのは、地元の学校を卒業しても、めぼしい働き場所がない点。高卒者は富士市に、大卒者は東名阪に行ってしまうだろう」
「浜松は、やらまいか精神と言って面白いことをいろいろとやるけど、静岡市はやってないね。浜松にはスズキやヤマハがあるし、浜松餃子もある」

人口減は今後も続く予測

国立社会保障・人口問題研究所の「将来推計人口」(2018年推計)は、静岡市の人口予測について2025年に約67万人、2040年には約59万人にまで減少すると指摘。市は「2025年に人口70万人を維持」としている。

一方の浜松市の「将来推計人口」は、2025年に約78万3000人、2040年に約72万8000人にまで減少するとしている。これに対し、市では2040年に73万8000人、2060年に68万1000人という展望を示している。今後の強化ポイントとして新産業・就業機会の創出、「70歳現役都市・浜松」の推進、子育てがしやすい生活環境の整備などを挙げている。

平成の大合併から15年以上経つ。若者の流出、人口減に歯止めをかけ、静岡市、浜松市が政令市として独自の存在感を放つ日は訪れるのだろうか。

地方大都市の若者流出、人口減を食い止めないことには、周辺市町村の衰退を防ぐこともできない。今後も人口減が続くようであれば、政令市のあり方を根本から見直す動きが出てくるかもしれない。東京一極集中の是正策とあわせて議論していくテーマだろう。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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