政令市でも若者の流出が続く「静岡と浜松」の苦悩 静岡市は婚活支援や新幹線通学支援も行うが…

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ヤマハやスズキの本社所在地として知られる浜松市の最新総人口は79万7211人(9月1日現在 日本人は77万1912人)で、前年同月比で3680人の減少。2020年中の総人口の減少幅は2561人、日本人は2471人減だった。静岡市よりは減少幅が小さいが、それでも減少を食い止められず、政令市の中では15番目にとどまっている。

浜松市は2005年、天竜川・浜名湖地域の12市町村が合併し、人口80万人規模の静岡県最大の都市となり、2007年には政令市となった。合併を経ているだけに、市域は広大だ。総面積は1558.06㎢で、市町村では高山市(岐阜県)に次いで日本で2番目に広い。政令市では最大である。ピアノ製造、自動車・オートバイ製造、ウナギの浜名湖、そして浜松餃子と全国区の知名度を誇るものが多い。

しかし、合併直後に81万7419人あった総人口は2008年の82万6168人をピークに減少の一途をたどり、2021年1月時点では80万人を割り込んでしまった。静岡市と同じような減少傾向である。

人口減の最大の理由は若者の流出

人口が減り続けている背景には少子高齢化による自然減もあるが、最大の理由は若者の流出。これは全国の地方都市共通の悩みだが、政令市も例外ではないということだ。

静岡市には国立の静岡大学、静岡県立大学など大学が5校、短大が5校あり、学生数はあわせて2万4000人弱となっている。しかし、進学時に東京や名古屋などの大学に進学し、卒業後も帰ってこないパターンや、県内の高校や大学を卒業後、東京などに就職するケースが多いという。

たとえば医学部志望の受験生の場合。静岡大学は6学部1教育プログラムを持つ総合大学だが、医学部がない。市内の受験生の進路は、県内ならば浜松医科大学、県外であれば東京や名古屋の大学の医学部が視野に入ってくる。静岡市を離れざるを得ないわけだ。

静岡市と静岡大学が包括提携を結び、地域の課題に取り組むために2020年に設置された「静岡大学将来構想協議会」がまとめた提言書の中に、若年層における人口流出超過の抑止が課題の一つとして取り上げられている。

それによると、静岡県の2019年度の18歳人口3万4871人のうち、県外大学への進学者は1万2024人。一方、他県から県内大学への進学者は3496人で、大学進学者流出入数の差は8528人で全国ワーストだった。この傾向は毎年9000人規模で10年以上続いているという。また、静岡大学の2019年度に学部を卒業して就職した1209人のうち、県内に就職したのは555人(45.9%)で、半数以上が県外に就職している状況だと記されている。

これらは静岡県の課題であると同時に、静岡市や浜松市の課題でもあると言えよう。

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