中国「新エネルギー車」好調も不安が拭えぬ背景 半導体不足の影響で生産が需要に追いつかず

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中国ではEV(電気自動車)など「新エネルギー車」の販売台数が急増するなか、自動車市場全体では先行きへの不安が広がっている(写真:編集部撮影)

中国で「新エネルギー車」の販売が好調だ。中国汽車工業協会が9月10日に発表したデータによれば、2021年8月の新エネルギー車の販売台数は32万1000台と、前年同月の2.8倍に増加。(エンジン車を含む)自動車販売全体に占める比率は17.8%に上昇した。

(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、電気自動車[EV]、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)

「新車販売台数に占める新エネルギー車の比率を2025年に20%に高めるという中国政府の目標を、前倒しで達成できそうだ」。中国汽車工業協会はそんな楽観的な見通しを示した。

新エネルギー車の種類別では、8月はEVの販売台数が26万5000台、PHVが5万6000台に達し、いずれも単月の販売記録を更新した。また、新エネルギー車の1~8月の累計販売台数は前年同期の2.9倍の179万9000台。自動車販売全体に占める比率は11%近くまで上昇した。

だが新エネルギー車の快走とは裏腹に、自動車販売全体の状況は芳しくない。中国の8月の新車販売台数は179万9000台と、前年同月比17.8%の大幅減を記録した。その原因は車載用半導体の供給不足と(大型トラックなどの)新たな排ガス規制の導入の影響である。

なかでも、2020年後半から表面化した車載用半導体の供給不足は深刻さを増しており、自動車業界に大きな打撃を与えている。車載用半導体の多くは最先端のプロセス技術は必要としないが、高い信頼性が求められるため、(自動車メーカーによる)製品やサプライヤーの認証に時間がかかる。供給不足だからといって、新たなサプライヤーを短期間で見つけることは困難なのが実情だ。

年末にかけて減産が深刻化する可能性

追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルスの感染拡大でマレーシアの半導体メーカーの一部が9月に生産停止に追い込まれたことだ。そのなかには、ドイツの自動車部品大手のボッシュが手がける車両の横滑り防止装置(ESC)向けの半導体を生産していた工場が含まれており、自動車メーカーの生産にさらなる影響を与えた。

本記事は「財新」の提供記事です

中国汽車工業協会のデータによれば、8月の乗用車の生産台数は149万7000台と、同月の販売台数(155万2000台)を5万5000台下回った。乗用車の需要は相対的に安定しているが、自動車メーカーは半導体不足で減産を余儀なくされ、供給が需要に追いつかなくなっている。

例年なら10月から12月にかけては、中国の自動車メーカーにとって(行楽シーズンや年末商戦で)需要が拡大する書き入れ時だ。しかし今年は、新型コロナの中国国内での局地的流行や海外での感染拡大により、自動車の減産がさらに深刻化する可能性がある。このため「通年の販売台数は予想に届かないかもしれない」と、中国汽車工業協会は分析する。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は9月11日

財新 Biz&Tech

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