「当社の資金繰りが一時的に困難になっているのは確かだ。社債を期限どおりに償還するのは難しく、問題解決に向けて努力している」
10月23日の正午頃、華晨汽車集団の担当者は財新記者の問い合わせにそう答えた。そしてこの日の深夜24時、額面10億元(約157億円)の同社の社債「17華汽05」はあえなくデフォルトした。
華晨汽車は中国の遼寧省政府直属の自動車メーカーで、遼寧省国有資産監督管理委員会が発行済み株式の80%、遼寧省社会保障基金会が同20%を保有する。公式資料によればグループの従業員数は4万7000人、総資産は1900億元(約2兆9790億円)を超え、上場企業4社を含む160社余りの子会社・関連会社を傘下に擁する。そんな大型国有企業の社債がデフォルトするのは異例のことだ。
同社はドイツのBMWとの合弁企業「華晨BMW」で乗用車を、フランスのルノーとの合弁企業「ルノー金杯」で小型商用車を生産するほか、「中華」および「華頌」という独自ブランドのクルマも生産している。しかし業績が好調なのは華晨BMWだけで、華晨汽車の連結純利益の9割を華晨BMWが稼ぐといういびつな状況だった。
BMWとの合弁見直しで信用力低下
しかし華晨汽車とBMWは2018年10月、BMWが2022年までに華晨BMWへの出資比率を現在の50%から75%に引き上げることに合意した。実行されれば華晨汽車の出資比率は25%に下がり、連結決算で同社の純利益に算入できる金額が目減りする。それが信用力の低下につながったとの見方が少なくない。
社債の半期報告書によれば、2020年6月末時点の華晨汽車の負債は総額1328億4400万元(約2兆830億円)に上り、のれんと無形資産を差し引いた後の総資産負債比率は71.4%に達している。
財新記者の取材によれば、華晨汽車は今年8月から資金繰りが苦しくなり、遼寧省国有資産監督管理委員会が主導するチームが経営を実質的に引き継いだ。このため、多くの債権者は同社の財務危機を知りつつも、政府の信用に期待してデフォルトは予想していなかった。
あるプライベート・エクイティファンドの担当者は、社債の償還期限前に自ら遼寧省に出張し、華晨汽車の状況について情報を集めた。その時点では、省政府の金融監督当局と地元金融機関が協議を重ね、社債の償還資金を地元銀行が融通することになっていたという。
「だまされたという思いだ」と、この担当者は落胆を隠さなかった。
(財新記者:安麗敏、王娟娟)
※原文の配信は10月23日
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